2025/02/26

「はなをくんくん」

春が待ち遠しい時期にぴったりの絵本です。雪景色の中で生きものたちが冬眠している静かな世界にうっとりさせられます。そして生き物たちが春の訪れを感じ、一斉に動き出す躍動感と春を見つけた喜びが、柔らかく優しく描かれています。 原作の題名は、"The Happy Day" です。なるほど!!
 
ルース・クラウス文、マーク・サイモント 絵、きじま はじめ 訳
福音館書店 
     
雪景色は白と黒で描かれています。雪景色は、ゲレンデのように太陽が反射してきらめくまばゆい銀世界ばかりではありません。のどかな場所が雪に覆われると、まるで墨絵のような、静かでおとなしい白と黒の雪景色になります。 雪に覆われていない部分がわずかな時、その部分は陰になり黒く見え、墨絵のような景色になるのです。 人里離れた山の雪景色は、それこそ白と黒の世界なのでしょう。 「はなをくんくん」の世界観と同じです。感受性の強い幼児期にゆっくりと読んであげたい絵本です。
すべて平仮名で書いてあり読みやすく簡単な文章なので、小学1年生が自分で音読学習するのにもぴったりだと思います。

ところで、何かと引き合いに出されるレイチェル・カーソンの「沈黙の春」という有名な本があります。原書は "Silent Spring" で、1962年に農薬が環境に与える影響について先駆けて指摘した本です。タイトルの意味は、よく考えると実に恐ろしい世界を暗示しています。眠りから覚めて一斉に躍動感に満ちるはずの春に、何も起こらなかったとしたら・・・。
沈黙の春という意味が怖いと思うかどうかは、大自然の生命の息吹を想像できるかどうかにかかっていると思います。特に都会に住んでいるならばなおさら、小さい時からあえて動植物に触れておきたいものだと思います。絵本や図鑑も大いに役立つと思います。「はなをくんくん」を知っていれば、沈黙の春の意味にピンとくるに違いありません。

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