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2025/11/06

「漁師とおかみさん」

ある漁師が、大きな物言う魚を釣り上げた。 
魚は、本当は魔法で魚にされた王子なのだ、と言うので、
漁師は魚を逃がしてやり、家に戻った。
それを聞いたおかみさんは、お礼に小さな家をくれるよう頼むと、 
願いは叶い、あばら家だった家が立派な家に変わった。
しかし欲望は次々と膨らみ、彼女は次々と贅沢を望むようになる。

「漁師とおかみさん」グリム兄弟の童話から
カトリーン・ブラント 絵、藤本朝巳 訳
平凡社

お話し会にもおすすめの、グリム童話の教訓話です。
初版のグリム童話に忠実に構成されており、少し細部が変えられているだけです。例えば、夫婦の住まいは小便壺から「あばら家」に、ヒラメは「物言う魚」に変えてあります。
絵は、流れるように力強い筆使いが重厚な雰囲気で可愛げもあり近づきやすく、物語を盛り上げてくれます。
「おかみさん」は、住んでいるあばら家に不満でいたところ、魚の不思議な力によって立派な家を手に入れます。しかしそれにも満足することはなく、身勝手で贅沢な願いはさらに続きます。ずうずうしい「おかみさん」とは反対に、尻に敷かれて言いなりになる「漁師」は、こうして何度も「おかみさん」に言われるがままに魚に願いをかけに行きます。その度に海は次第に表情を荒らげて迫力を増していきます。楽をして贅沢を手に入れ、いつになっても現状に満足のできない「おかみさん」と、そんな彼女を止められない「漁師」は、挙句の果てにはどうなるのでしょうか? それはお決まりの結末ですが、それがやはり昔話の愛されるいいところだと思います。

次回は、この物語と似た日本の昔話について書きます。主人公がどんどん欲深くなっていって我を見失うところが似ていますし、結末も同じようなのですよ。

2024/11/30

「鏡よ、鏡、壁の鏡よ。誰が一番きれいかえ?」
白雪姫の継母は真実のみを語る鏡に問いかけます。
継母は、自分が一番きれいと言われなければ満足しません。
鏡が「白雪姫は、誰よりもきれい」と答えると、
継母は、ねたましさのあまり白雪姫の命を奪おうとします。
白雪姫は命を狙われて森をさまよい、
出会った七人の小人たちの家に住み込みます。
そこにも、継母が白雪姫の命を狙いにやって来るのでした。

ナンシー・エコーム・バーカート 画、八木田宜子 訳
冨山房
全国学校図書館協議会選定図書
日本図書館協会選定図書
絶版になりました

初版のグリム童話に忠実に沿って書かれた絵本です。あらすじは下記の通り。あまりに恐ろしい継母に、純真な白雪姫は何度もあっさりとだまされて気の毒なことになってしまいます。絵は細部まで細やかに描き込まれていて、継母の行いの強烈な不気味さを絵が怪しく盛り上げてくれる一方、きれいな白雪姫の絵には見とれてしまいます! また、繰り返し出てくる名ぜりふが「鏡よ、鏡。」ではなく、「鏡よ、鏡、壁の鏡よ。」なのが嬉しいです。英語でも有名な "Mirror, mirror on the wall, …" を直訳し、同じ言い回しになっています。 小人たちが白雪姫に出会った時の言葉の繰り返しも面白いですね。それは次のような場面で出てきます。小人たちが留守にしている家に入り込んだ白雪姫は、食卓に上がっているものを少しずつ頂戴し、ベッドで寝てしまいます。帰宅した小人たちは、「わしの椅子に座っとったやつは誰だ?」「わしのパンを食べとったやつは誰だ?」「わしのベッドに寝とったやつは誰だ?」・・・などと言い、ぐっすりと眠る白雪姫を見つけます。 ―― このような言葉の繰り返しを味わえるのもいいですね!
すべての漢字には振り仮名付きです。

《あらすじ》
白雪姫の継母は国一番の美貌でしたが、白雪姫がやがて自分よりも美しく成長すると、ねたましさのあまりに白雪姫の命を4度も狙います。継母が「鏡よ鏡・・・。」と問い、自分ではなく「白雪姫が一番きれい」と答えが返ってくる度に、白雪姫の命を狙うのです。まずは狩人に頼み、猟刀で刺して内臓を持ち帰らせて食べようとするも失敗。森へ逃げた白雪姫は、七人の小人の家にたどり着き、住まわせてもらうことになります。2度目からは、継母自らが小人の家に住む白雪姫のところへ出向き、白雪姫を胸紐で息ができないほど締めたり、3度目には毒の櫛で髪をとかして気を失わせ、4度目には毒リンゴを食べさせて死なせてしまいます。しかし白雪姫は棺の中に横たわってもなお七人の小人たちに大切に見守られ、偶然通りかかった王子様のおかげで息を吹き返し、彼と幸せな結婚をします。一方継母は、白雪姫にひどいことをした罰を受けることに。

2024/11/28

「ガルドンの ながぐつをはいたねこ」

年老いて仕事をやめた粉屋は 3人の息子達に財産を分けることにした。
1番上の息子には粉をひく風車を、
2番目の息子にはロバを、
3番目の息子にはプスという名の猫を分け与えた。
猫など何の役にも立たないとがっかりする3番目の息子だが、
賢く自信に満ちた猫は、その知恵で3番目の息子を導いていく。

 
ポール・ガルドン 作、寺岡恂 訳
日本子どもの本研究会選定図書
ほるぷ出版
絶版になりました 

「長靴を履いた猫」の話は人気で様々な本になっています。この個性派の猫を、絵本では例えばハンス・フィッシャーはユーモラスにひと際目立たせて、マーシャ・ブラウンは華やかにしなやかに、ジュリアーノ・ルネッリはエレガントに描いており、いくつも読み比べてみるのも面白いです。私が一番大好きな「長靴を履いた猫」はポール・ガルドン作「ガルドンの ながぐつをはいたねこ」です。登場人物は皆感じが良く、明るく軽やかで爽快な物語になっています。絵を眺めれば話がわかりやすく解釈でき、幼い子どもも楽しく読めます。粉屋の息子が突然に高貴な身なりをしても、人一倍男前なのでよく似合い不自然ではないのも見て楽しめます。この点は他の絵本よりもわかりやすいと思います。この面白さをぜひ本棚に! 
すべてひらがなとカタカナで書かれています。 

元々の話と読み比べるならばこの本をどうぞ。

 
シャルル・ペロー著、新倉朗子 訳、岩波文庫
「長靴をはいた猫」が収録されています

吉原高志・吉原素子 訳、白水社
「長靴をはいた牡猫」が収録されています
絶版になりました