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2026/06/02

「ほたるホテル」やなぎむらのおはなし

大きな大きな柳の木の下に、
小さな小さな「やなぎむら」がありました。
毎年夏の間に、
「やなぎむら」の虫たちは蛍たちと「ほたるホテル」を開きます。
たくさんの虫たちが泊まりにやってきます。
そこへ、困ったお客が現れました。

「ほたるホテル」やなぎむらのおはなし
カズコ・G・ストーン 作
福音館書店 1998

蛍は優しく光り、柔和に点滅しながら穏やかな曲線を描いて舞い、ただの夜の小川のほとりの草やぶでさえ、幻想的で優雅に演出してくれます。 蛍が見られる期間も場所も限られ、見る機会はなかなか得られず残念ですが、代わりに蛍の季節に読みたい絵本が「ほたるホテル」です。虫たちの世界が、優しい彩りでかわいらしく繰り広げられています。一生懸命に働いたり、得意技を披露したり、のんびりくつろいだり。個性豊かな虫たちの様子がたっぷりと描かれていて、絵を読み込むのが楽しい絵本です。また、「ほたるホテル」で過ごす心地良い時間は、虫たちみんなで力を合わせて調和し合って作ったものだと、子どもにもちゃんと伝わる絵本です。

2026/04/10

「そらいろのたね」

ゆうじが模型飛行機を飛ばして遊んでいると
キツネがやって来ました。
ゆうじが宝物にしている模型飛行機とキツネが宝物にしている空色の種を、
互いに交換することにしました。
ゆうじが空色の種を蒔き、水をやると、何と家が生え育ちました。

「そらいろのたね」
中川季枝子 作、大村百合子 絵
福音館書店 1967

 種を蒔いて植物を育てると、見守るのが毎日の楽しみになります。「そらいろのたね」では、どんどん大きく育つ楽しみを不思議な物語に仕立ててあります。「ゆうじ」は、空色の種を蒔いて育てた空色の家に動物たちを招き入れますが、それを見たキツネは――。キツネの役は、他の動物ではなくキツネこそがふさわしいと納得できます。けれども、何だか憎めないキツネさんですね。

2026/04/08

「どろんこハリー」

ハリーは黒いぶちのある白い犬で、
お風呂に入るのだけは大嫌いです。
ある日、ハリーは遊びに出て泥だらけになり、
白いぶちのある黒い犬になってしまいました。
家に帰っても、家族は誰もハリーだと気付いてくれません。
そこでハリーは・・・。

「どろんこハリー」世界傑作絵本シリーズ
ジーン・ジオン 作、マーガレット・ブロイ・グレアム 絵
渡辺茂男 訳
福音館書店 1964

ハリーが楽しく無邪気に泥だらけになって遊ぶ姿は、どろんこ遊びが大好きな子ども達の共感を得ることでしょう。「黒いぶちのある白い犬」のハリーが次第に汚れて「白いぶちのある黒い犬」になっていく姿を、ページをめくる度にどこにいるのか探すのも楽しいです。どのページも幸福感のある雰囲気です。子ども心をつかんで楽しく幸せな気分に浸れるのが、何十年も愛される理由なのかもしれません。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。

原書:
Harry the Dirty Dog
Written by Gene Zion, Pictures by Margaret Bloy Graham, 
Harper & Row, 1956.

2026/03/20

「The Kissing Hand キスのおまじない

お母さんのもとを離れ、
学校へ行くことになったアライグマのチェスター。
チェスターはお母さんと離れることへの不安でいっぱいです。
そこでお母さんは、
代々伝わる特別なおまじないをチェスターに授けました。
おまじないはチェスターを温かく包み、勇気付けます。

「The Kissing Hand キスのおまじない」
オードリー・ペン 文、
ルース・E・ハーパー 絵、ナンシー・M・リーク 絵
入澤依里 訳
アシェット婦人画報社
絶版になりました

お母さんからおまじないをしてもらったチェスターは、お母さんの愛にいつでも包まれていることを再確認して自信を持ちます。これまで時間をかけて育んだ愛情があるからこそ、おまじないは効くんでしょうね。そしてチェスターを見送るお母さんも、チェスターの愛に包まれ、子離れへの一歩を踏み出しているのです。 
集団生活で学んで成長していく速さには驚かされ、頼もしいものです。これから幼稚園や学校での生活が始まるお子さんへの読み聞かせにおすすめです。ただ、残念ながら日本語版は今は販売されていません。
原書はいかがでしょうか。アマゾンの Kindle で中身を少しご覧になれます。


The Kissing Hand
by Audrey Penn, Ruth Harper, Tanglewood, 1993.

2026/03/10

「ちいさいおうち」

田舎の静かなところに、
きれいで丈夫な小さいおうち家がありました。
建てた人はこの家を誰にも譲りたくないほど大切にし、
小さいおうちも自然に囲まれた場所を気に入っていました。
しかし、小さいおうちの建つ田舎は街へと変わっていきます。

「ちいさいおうち」
バージニア・リー・バートン 作、石井桃子 訳
岩波書店 1965
コルデコット賞受賞

田舎の丘の上に建つ「小さいおうち」は、豊かな季節の移り変わりを眺め、家族の暮らしを見守ります。やがてこの田舎は街へと変わり、都会の街に変化を遂げ、「小さいおうち」のある場所だけが取り残されてしまいます。もはや都会の風景の中の異物のような存在です。「小さいおうち」も、ここはもう自分にふさわしい居場所ではないと感じます。主が住まなくなり忘れ去られていく「小さいおうち」はどうなるのでしょう。
物言わぬ「小さいおうち」には心があり、周囲を見て感じています。ものにも愛情を持って大切に思う気持ちが引き出されます。季節や時代の変化を眺めるのも面白いです。優しくかわいらしい色彩の絵は、飾っておきたくなる美しさです。 

日、月、木などの簡単な漢字が用いられ、ふりがなが振ってあります。
小学生の低学年のお子さんの読書にもぴったりです。

「ちいさいおうち」は、表紙が布貼り風の絵本(↑)と、小さいサイズの岩波子どもの本(↓)の2種類があります。

「小さいおうち」岩波子どもの本
バージニア・リー・バートン 作、石井桃子 訳
岩波書店 1954

2026/01/18

「ぼく にげちゃうよ」

子ウサギは家を出てどこかへ行ってみたくなりました。
「ぼく、逃げちゃうよ」
すると、母さんウサギは言いました。
「おまえが逃げたら、母さんは追いかけますよ」

「ぼく にげちゃうよ」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作、クレメント・ハード 絵
いわたみみ 訳
ほる出版 1976
全国学校図書館協議会選定図書
日本図書館協議会選定図書

子ウサギと母さんウサギの幸せをおすそ分けしてもらえる物語です。
子ウサギが川の魚になって泳いで逃げようと、高い山の岩になろうとも、鳥になって逃げようとも、母さんウサギは、あの手この手で「見つけ出しますよ」と言うのです。子ウサギと母さんウサギのやり取りがほほえましく、追いかけっこをしている絵が包容力と想像力に満ちていて楽しいです。結局子ウサギは母さんにはかなわず、話のオチは、母さんウサギの懐にすとんと落ちる温かい物語になっています。
この絵本の挿絵が、「おやすみなさいおつきさま」「ぼくのせかいをひとまわり」の絵本の中で額縁に飾られています。これら3冊の絵本は大きさも同じで、揃えたくなります。

原書:
"The Runaway Bunny"
by Margaret Wise Brown (Author), Clement Hurd (Illustrator),
Harper & Row, 1942

2026/01/16

「ぼくのせかいをひとまわり」

ぼくの絵本、ママの絵本。
ママの椅子、ぼくの椅子。
パパのぼく、ママのぼく、
ぼくのおもちゃのくまちゃん。

「ぼくのせかいをひとまわり」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作、クレメント・ハード 絵
おがわ ひとみ 訳
評論社 


「おやすみなさいおつきさま」の子ウサギの家族が登場し、生活感を見せてくれます。カラフルなページとモノトーンのページが交互に出くる構成は「おやすみなさいおつきさま」と同様です。
原題は "My World" です。子うさぎ「ぼく」の世界は手の届く範囲にあり、確かに「ぼく」のために存在するものであふれています。パパやママのものと比べると「ぼく」のものは小さく、本格的ではなく、使いこなせないものもあるけれど、間違いなく「ぼく」の大切なもの。それを紹介して見せてくれる子ウサギは、満たされた気分でいるように思えます。
次回は「ぼく にげちゃうよ」について書きます。その挿絵は、「おやすみなさいおつきさま」と「ぼくのせかいをひとまわり」に出てくる額の絵になっています。

原書:
"My World"
by Margaret Wise Brown (Author), Clement Hurd (Illustrator),
Harper, 1949.
楽天 / アマゾン

2026/01/08

「ねむいねむいおはなし」

「ねむいねむいおはなし」
ユリ・シュルヴィッツ 作、さくまゆみこ 訳
あすなろ書房 2006




おやすみまえの読み聞かせにとっておきの絵本。
「おもちゃのチャチャチャ」のように、真夜中におもちゃが人知れず遊んでいるに違いない ――― 子どもの頃そう考えた人もいると思います。「ねむいねむいおはなし」は、そんな密かな楽しみで胸をいっぱいにさせながらも、すうっと眠りの世界へと誘ってくれるお話です。「ねむいねむい」という言葉が何度も出てきて、呪文にかかったようにその気になってしまいます。
日本語の響きがとってもいいです!

すべてひらがなとカタカナ表記です。

原書: 
"So Sleepy Story" 
by Uri Shulevitz, 2006.

2025/11/28

「バルバルさん」

床屋のバルバルさんは、毎日楽しく仕事をしています。
今日のお客さんはいつもと違います。
動物たちが次々にやって来るのです。

「バルバルさん」
乾 栄里子 作、西村 敏雄 絵
福音館書店 2008

いつもとは違うお客さんにドッキリしながらも、いつものように楽しく仕事をするバルバルさん。お客さんとしてやって来た動物たちもご満悦です。ほのぼのとして幸せな気分になるチャーミングな絵本です。ところで、どうして今日のお客さんはいつもと違うのでしょう? 絵本を読むと、なるほどな事情がわかりますよ。

2025/11/16

「ちいさなヒッポ」

カバのヒッポは生まれた時からいつもお母さんと一緒。
カバは昼間は眠って夜は草を食べ続け、
大きく力強くて怖いものなしです。
まだ小さなヒッポもお母さんと一緒にいれば安心です。
ところが、ひとりで群れから離れたヒッポは大変な目に! 

「ちいさなヒッポ」 マーシャ・ブラウン 作、内田 莉莎子 訳
偕成社 1984


万が一の時のために、お母さんはヒッポに身を守る術を教えていました。ヒッポは危機一髪、お母さんに教わった方法で命を救われるのでした。
「ネイチャーハンドブック 世界哺乳類図鑑」(新樹社)によると、――カバは見かけによらず陸上でも水中でも機敏。夏の間は一時的な大きな群れを作り、水たまりで水浴びをしている。夜行性で主に草を食べる。そして、メスは水中で子どもを1頭産み、母親は激しく子どもを守り、子どもはほぼ成熟するまで母親と一緒にいる。――ということです。
「ちいさなヒッポ」にはカバのこの特性が盛り込まれ、カバの母と子の一大事を描いた愛情に満ちた物語です。落ち着いた色彩で彩られたキリリとした迫力のある版画が美しく、版画の質感が伝わってくる画用紙のような紙質も良いです。

水、川、木、金、目といった小学1年生で習う漢字が使われ、ふりがな付きです。
小学1年生の音読学習にもぴったりです。

2025/11/04

「てぶくろ」

おじいさんが森の中で落とした手袋の中に
生きものたちが次々と住み込みます。
あっという間に住人は7匹に。
はじけそうになった手袋は、どうなるのでしょう。

「てぶくろ」ウクライナ民話 世界傑作絵本シリーズ
エウゲーニー・M・ラチョフ 絵、うちだりさこ 訳
福音館書店 1965
厚生省中央児童福祉審議会推薦
全国学校図書館協議会選定
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

手袋にはまず、すんなり入りそうなネズミ、カエルが住み込みます。続いて、ウサギ、キツネ、オオカミ、イノシシ、クマが順に入りたいとやって来ます。ウサギの段階で現実ならば無理なところを、絵を見ると画力により心配ご無用に思えてしまいます。さすがに段々と窮屈になっていき、最後のクマが手袋に収まる姿だけは、読者の想像に任せています。また、手袋に生きものたちが入り込むにつれ、手袋が次第に建築物のようになったり、破れそうになっていく変化も凝っていて、何度読んでも飽きません。驚くべき面白さです。同じようなセリフを淡々と繰り返す昔話でありながら、こんなにも豊かに描かれていることで、世界中で長く愛される絵本になったのだと感じました。

2025/10/30

「くまのビーディーくん」

ビーディー君は、セイヤー君のぜんまい仕掛けのクマです。
いつも一緒に遊んで一緒に寝るのです。
ある日、ビーディー君は留守番中に本を読み、
クマは洞穴に住むことを初めて知ります。
そして、クマらしく洞穴で過ごしてみることにしました。
けれども何だか落ち着きません。
どうやら何か必要なものが足りないようなのです。
「くまのビーディーくん」
ドン・フリーマン 作、松岡享子 訳
偕成社 1976
厚生省児童福祉審議会特別推薦

クマは洞穴にすむ勇敢な動物だと知ったビーディー君は、ならば自分も勇敢なクマらしく、洞穴で暮らしてみようと試みます。そうして、ビーディー君にとって一番心安らぎ満ち足りるものは何かを知ります。おもちゃのビーディー君と人間のセイヤー君との、優しくて温かな物語です。ふたりの結び付きに心が動かされます。
挿絵は白黒の版画で、雪景色や明かり、夜空や洞穴の暗さが引き立っています。ビーディー君とセイヤー君の表情が優しく、微笑ましいです。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。

2025/10/24

「しょうぼうじどうしゃ じぷた」

ジプタはジープを改良してポンプやサイレンを付けた消防車。
同じ署内の消防車や救急車と比べ、小さくて見劣りします。
小さな火事の時にしか出動しませんでした。
しかしある日、山小屋が火事になり、
山火事の惨事を防ぐために出動を命じられたのは、 
小さくても馬力があり、険しく細い道に向いているジプタでした。
 大活躍したジプタは子ども達の人気者になりました。

 
「しょうぼうじどうしゃ じぷた」
渡辺茂男 作、山本忠敬 絵
福音館書店 1966年

 

 

自分の持ち味を力にするジプタの物語。
1966年に発行されてからずっと愛され続けている絵本です。大人気の消防車が主人公で、コンプレックスを持つ主人公が、マイナスと思っていた自分の特性を生かして大活躍し、自他共に認める個性的なヒーローになるという普遍の爽快なストーリー。勇気と自信を持っている「じぷた」を、心の中に持ち続けていて欲しいと思います。
「消防自動車99の謎」(消防の謎と不思議研究会 編著, 二見書房, 2006年)によれば、消防車は活躍の場に求められる仕様で作られる車両で、1台1台が異なるのだそうです。また、隊員が署の上の階から下の階へ鉄棒にしがみ付いて滑り降りる「すべり棒」というのは、危険を伴うため今はもうないのだそうです。「じぷた」の絵本の中には「すべり棒」が出てきますので、「じぷた」を愛する人には少し残念ですね。



2025/10/20

「そら、にげろ」

むかしむかし、 旅人が犬に吠えられると、
旅人の服の模様の鳥たちが5羽、
逃げ出してしまいました! 
旅人はひたすら逃げた鳥たちを追いかけます。
はたして捕まえられるのでしょうか?

「そら、にげろ」
赤羽末吉 作・絵
偕成社 1978
国際アンデルセン賞 画家賞
台湾・中國時報選定
ライプチヒ国際ブックデザイン展金賞受賞
絶版になりました

文章が少ししかない、ほとんど絵だけの絵本です。
旅人はひたすら野を越え山を越えて走り回ります。様々な景色、愉快なできごとが描かれているのを眺めると、文がなくても自然と口から言葉が出てきます。一人で読むよりも親子で読むと楽しいです。 
作者の赤羽氏がこの絵本のカバーのそでに記しているように、何度も見る度にいろんなことが見えてきます。主人公が「旅人」であるためか、この話は短い時間のできごとではありません。よく絵をみると、長い長い時間をかけて展開していることに気付きます。時の移ろいと出来事の移り変わりを一枚の紙面に描く絵巻物のように、絵を見ることで話を読めます。これは赤羽氏の絵に特徴的な描き方だと思います。ですから赤羽氏の絵はいつもわかりやすくて、話にスッと入り込んでいけるのだと思います。

2025/10/14

「リアル・ラヴ」ショーンのために描いた絵

「リアル・ラヴ」ショーンのために描いた絵
ジョン・レノン 絵、オノ・ヨーコ 序文
 徳間書店 2000
絶版になりました

ジョン・レノンが愛するご子息のためにイラストを書き、それに言葉を添えて読み上げている素晴らしいひとときが目に浮かびます。こちらも幸せな気分になります。愛に満ちたジョンの歌のように、このシンプルでいて想像力に富んだ温和なイラストと言葉が響きます。

英語と日本語で書いてあります。

絶版ですが、ジョン・レノン公式サイトの Books タブからか中身を少し見ることができます。

2025/10/12

「変なお茶会」

お茶会の招待状を受け取ったさまざまな人たちが、 世界各地からトランスバールの城へ向かってやって来て再会を喜び合います。 そして、お茶会のテーブルで天然のココアを皆で味わい、 また来年会いましょうと帰って行きます。

   
佐々木マキ 作
絵本館 
 
変なお茶会は、年に一度、決まった時刻に湧き出る天然のココアを飲む集まりです。実に変な話だけれども、実に憧れる話です。
人と待ち合わせする時、相手は今頃車であのあたりを走っているのかな?飛行機で窓の外の景色を眺めているかな?颯爽と歩いてこちらに向かっているかな?などと、ともに同じ目的地へ向かっている様子に思いを巡らせることがあると思います。「変なお茶会」に集まるメンバーも、多様な手段で同じ目的地を目指してやって来ます。その様子が個性豊かで楽しく、待ち合わせ相手を思う時のように想像してしまいます。強烈な趣向と贅沢気分に浸れる、ドキドキする楽しい話です。
佐々木マキさんの作品で、私はこれが一番好きです。私は本のカバーは読む時にパサパサして気になるのですぐに捨ててしまいますが、「変なお茶会」の、にやりと微笑んだ月が印象的なカバーは大事に付けています。カバーを外してみると渋い草のような色の布貼りハードカバーで、こちらも素敵です。 

2025/10/10

「いぬとくま ずっとふたりは」

「いぬとくま ずっとふたりは」
ローラ・ヴァッカロ・シーガー  作、落合恵子 訳
クレヨンハウス 2008

この1冊に3つの短い話が入っています。イヌとクマとのごく普通の日常を描いており、話がコロッと変わって終わってしまう短くシンプルな展開の中に、イヌとクマが互いを思いやる気持ちがあふれています。仲が良くてほほえましく、話も面白いですよ! 性格の違いも察することができます。イヌは少し我が強い感じが見られ、クマは器の大きな感じがします。 物語りも絵の筆使いも共におおらかです。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。
小学1年生の音読学習にもぴったりです。

2025/10/02

「まいごのペンギン」

ある日、男の子の家の前にペンギンが現れました。
ペンギンはどうして男の子のところへ来たのでしょう。 

「まいごのペンギン」
オリヴァー・ジェファーズ 作、三辺律子 訳
ヴィレッジブックス
ネスレ子どもの本賞金賞受賞作
絶版になりました

迷子のペンギンはどこから来たのか?そう考えた男の子は行動を起こし、やがて真実へとたどり着きます。一生懸命な男の子の大胆な冒険と、寡黙なペンギンとのすれ違いに胸が高鳴り、心の奥にある“たいせつなもの”をそっと思い出させてくれる絵本です。壮大な南極への旅を思わせるような大判サイズの本です。
文章もシンプルです。日本語版は残念ながら絶版になっていますが、英語の原書はいかがでしょうか。評判が良く人気があります。アマゾンにサンプルが掲載されています。

 原題: Lost and Found
 by Oliver Jeffers (Author, Illustrator), Philomel Books, 2005.

2025/09/30

「かいじゅうたちのいるところ」

いたずらしてお母さんに叱られたマックスは
寝室に押しやられます。
するとマックスのいる部屋には木々が生い茂り、
森のような別世界に。
そしてマックスは旅に出ます。 
たどり着いたところは、怪獣たちのいるところ。

「かいじゅうたちのいるところ」
モーリス・センダック 作、神宮 輝夫 訳
冨山房 1975
コルデコット賞受賞

マックスの想像の世界は、世界中の子どもたちが描く空想や願望ときっと似ているのだと思います。勇敢で人気者でみんなを動かせるマックスの物語は憧れなのではないでしょうか。最後にマックスが我に返る描写が私はたまらなく好きです。その最後の描写を初めて読んだ時、すっかり心を掴まれました!
この実写版の映画が、日本では2010年1月に公開されています。

「かいじゅうたちのいるところ」
アマゾン Prime Video

2025/09/26

「ももたろう」桃太郎絵本の傑作

「ももたろう」日本傑作絵本シリーズ
松居直 文、赤羽末吉 画
福音館書店 1965
全国学校図書館協議会選定「基本図書」
全国学校図書館協議会第14回推薦
厚生省中央児童福祉審議会特別推薦
第12回サンケイ児童出版文化賞受賞
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

昔話の語り言葉の面白さ、リズムの良さが堪能できる、声に出して読み聞かせるのが楽しい昔話です。桃太郎誕生の背景や征伐への旅立ちがじっくりと描かれており、読みごたえがあります。おじいさんとおばあさんが大切に育てた桃太郎を鬼退治に送り出す姿と、無事に帰って来た桃太郎を喜んで迎える姿に、親としては気持ちが重なります。自信に満ちた桃太郎のたくましい姿は頼もしく、鬼が島へと向かう場面は高揚感と見ごたえがあります。 それから最後に、挿絵を描いた赤羽さんらしい仕込みがあります。

桃太郎伝説は何を例えているのか。簡単に言えば、桃太郎は大和朝廷を、鬼は製鉄技術を意味するとも言われています。世界は鉄を制したところから覇権を握ってきました。国を強く栄えさせる製鉄技術を確保するために、「桃太郎」こと大和朝廷は大義名分を打ち立てて「鬼退治」に行き、「鬼」すなわち製鉄技術を手中に収めたのです。鬼と言えば金棒を持っているイメージがありますが、金棒は彼らの製鉄技術の象徴なのです。この「ももたろう」の絵本にも金棒を持った鬼たちが登場します。そして面白いことに、鬼退治を終えて帰る舟には、桃太郎たちと一緒に赤鬼と青鬼も乗っているのです。これは何を意図しているのでしょうか? 製鉄技術者を連れて来たということでしょう。この仕込みがあるために、数ある桃太郎絵本の中でもこの作品が完璧だと思います。読み解き方はそれぞれですが、どう読み解くかの余韻が、かつて子どもだった読み手が大人になっても響く作品です。

数字は漢字で、他はすべてひらがなで書かれています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。