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2026/01/06

「オズのまほうつかい」

フランク・ボーム 原作、木坂涼 文、朝倉めぐみ 絵
フレーベル館 2016
全国学校図書館協議会選定図書

前回は原作に忠実な「オズの魔法使い」をご紹介しましたが、今回はもっとシンプルに絵本で読む「オズのまほうつかい」です。
朝倉めぐみさんのイラストで出版されたと知った時は嬉しかったです。ファッショナブルな絵本で感激しました。この物語の象徴のひとつ、エメラルドの彩りが素敵です。

2025/10/18

「美女と野獣」エロール・ル・カインが描く

父親の命と、欲張りで見栄っ張りな2人の姉の命と引き換えに、 死を覚悟してケダモノの御殿に向かったキレイさん。しかしケダモノは、見かけによらず親切で優しいのです。

「美女と野獣」
ローズマリー・ハリス 再話、エロール・ル・カイン 絵
矢川澄子 訳
ほるぷ出版 1984
全国学校図書館協議会選定図書
日本子どもの本研究会選定図書
絶版になりました

「美女と野獣」の原作に近い作品をお探しでしたら、この絵本はいかがでしょうか。
キレイさんは、例えつらい状況の中でも美しいものを愛で、相手を思いやる心優しく美しい女性です。キレイさんはケダモノに出会って間もなく、見かけは恐ろしいが心は優しいケダモノの本質を見抜き、心を開いていきます。悲しみと寂しさがにじみ出た表情のケダモノに、優しく向き合うキレイさんの慈悲深い愛情に胸が打たれます。 
エロール・ル・カインの描く絵は、吸い込まれるようにうっとりする柔らかな曲線と色彩が美しいです。見開いたページの半分には絵が、もう半分には文章が書いてあり、文章は伝説の生きものたちなどの絵模様でぐるりと囲まれています。ル・カインの絵を眺めていると、不思議な物語の世界へと導かれ、引き込まれてすっかり浸ってしまいます。
文章も美しく、特にキレイさんの言葉は心から優しくて正直で素敵です。

すべての漢字にはふりがなが振ってあります。

2025/04/02

太宰治 作、戸田幸四郎 画
 戸田デザイン研究室
目の前で次々と展開されていくかのような臨場感あふれる文章に圧倒され、手に取るように伝わるメロスの気持ちに鼓動が高鳴ります。長い文章もじっくり聞ける年頃になったら読み聞かせたい名作です。
どんなに強い人でも人知れず迷う時があるのに違いありません。メロスがくじけそうになり葛藤する事細かな描写や、ついに友と対面し、次第に気持ちが洗われ爽やかになっていく感動の場面といった、メロスの心の激しい揺れ動きを子供達にも感じとって欲しいと思います。絵本という近寄りやすさで名作を堪能できる、ありがたい作品です。
「走れメロス」の文章は日常聞きなれない言葉の嵐です。しかし、話の流れは子供達にも伝わるはずです。言葉は生きているとは言え、明確さに欠け、乱れ、貧弱な言葉もあふれる世の中の言葉を浴びている子供達にこそ、学校で学ぶのを待たずに読み聞かせたい「走れメロス」。太宰治の一気に読み通さずにはいられないこの作品は、一つ一つ熟考して選んだ言葉は強い力を持つことを子供達に付き付け、考えさせるきっかけになるのではないでしょうか。
戸田幸四郎さんの大胆で力強い筆遣いの挿し絵は、畳み掛ける文章から湧き出る読み手聞き手の想像力を妨げず、膨らませてくれます。

原文に忠実に作られた絵本です。
すべての漢字にはふりがなが振られ、難しい言葉は(カッコ)の中に説明を加えてあります。
ただしカッコ内の漢字はふりがななしです。

2025/03/30

「手ぶくろを買いに」日本の童話名作選

初めての雪景色の中を駆け回った子狐。
母さん狐は子狐の冷たく濡れた手を温めながら、
夜になったら子狐のために手袋を買ってやろうと思いました。
町へ向かうとお母さんは、
かつて町へ行った時に人間に追われて逃げたことを思い出し、
足がすくみました。
仕方なく子狐だけを町へ行かせることにしました。
  
「手ぶくろを買いに」日本の童話名作選
新美南吉 作、黒井健 絵
偕成社
優しい文章で読みやすく、穏やかな気持ちになります。雪景色や町の明かりを初めて見た子狐のかわいらしい言葉にはドキリとします。また、人間を恐れて警戒する母さん狐の気持ちと、人間の優しさを感じとった子狐の気持ちのどちらにも人間の姿が反映され、「ほんとうに人間はいいものかしら。」と繰り返してつぶやく母さん狐の言葉は余韻を残します。
黒井健さんのふんわりした絵がとても素敵です。柔らかな雪景色や狐の毛並み、夜の街にぽっと照る明かりを描く絵が、優しい文章や狐の親子の愛情に重なります。とろけるような優しい絵本です。
旧仮名を改め一部改行した他は、原文のままの記載だそうです。

前回の「ごんぎつね」と「手ぶくろを買いに」は同じく黒井健さんが手がけた新美南吉童話で(日本の童話名作選、偕成社)、大きさも同じおそろいの本です。

2025/03/28

「ごんぎつね」日本の童話名作選

いたずらばかりしていた「ごん狐」は、
ある時、兵十にした いたずらを悔やみました。
「ごん狐」はそれから毎日、
良かれと思って兵十に届け物をするのでしたが・・・。
   
「ごんぎつね」日本の童話名作選
新美南吉 作、黒井健 絵
偕成社

独りぼっちの「ごん狐」が、独りぼっちになった兵十に共感を抱いてからは、「ごん狐」は兵十のために毎日山の恵みを届けます。ところが、「ごん狐」と兵十の気持ちはすれ違い、「ごん狐」の死という悲劇が起こってしまうのでした。
思いがけない突然の悲劇が起こるなり、ぱったりと幕を閉じる物語です。「ごん狐」の胸の内は物語の中でよくよく述べられており、兵十への思いをうかがい知る事ができます。しかし、その最後には何を思ったのでしょうか。幕を閉じた後の兵十の気持ちはいかがなものだったのでしょうか。ぱったりと幕を閉じてからは、読む人それぞれの思いが錯綜する、後を引く物語です。「ごんぎつね」は小学4年生の教科書に掲載されています。
こちらの絵本は黒井健さんの色鉛筆で描かれた柔らかい絵で、石垣のある村の美しい風景が渋い色合いで描かれています。いたずらだけれどもかわいらしい「ごん狐」には、切ない思いが募ります。
旧かなづかいを新かなづかいに改めた他は、原文のままだそうです。

次は同じく黒井健さんが手がけた新美南吉童話「手ぶくろを買いに」について書きます。
同じく偕成社から日本の童話名作選として出版されています。大きさも同じ、おそろいの本です。

なお、火縄銃については名古屋刀剣ワールドのウェブサイト「火縄銃とは」に詳しい説明があります。刀剣ワールドには刀剣のみならず、甲冑や火縄銃も所蔵されており、その品々の量には圧倒されます。日本を動かし築き上げてきた歴史とともにあった品々に惚れ惚れし、改めて誇りに思うありがたい場所です。

2025/03/20

「アリババと40人の盗賊」

アリババは、盗賊が宝を隠している洞窟と、 洞窟を開閉する呪文を偶然に知り、洞窟にこっそり入って金貨を持ち帰る。 
アリババの兄カシムもこれを知って洞窟へ行くが盗賊に見つかって殺され、バラバラにされて洞窟の中に見せしめに置かれた。
アリババはバラバラにされたカシムを密かに持ち帰り、家政婦のモルジアーナの知恵により、カシムの体は傷ひとつなく縫い合わされ、人に死に方を怪しまれることなく埋葬された。
 一方、カシムの遺体がなくなったことに気づいた盗賊は、 洞窟の秘密を知る者を探してアリババの家を突き止め、 アリババの命を狙いにやって来る。 

マーガレット・アーリー 文・絵、清水達也 訳
評論社

恐ろしく無情な盗賊に、アリババの家政婦モルジアーナは知恵で挑みます。アリババの命を狙う盗賊のたくらみにモルジアーナは一つ一つ感付いては、冷静に着実に反撃していくのです。盗賊は実に残酷なことをするのですが、モルジアーナも・・・つわものなのです。 
洞窟を開く呪文は「ひらけ、ゴマ!」です。よく知られたこの言葉を、物語とともに知って欲しいと思います。この絵本では恐ろしいことも包み隠さず描き、困難に立ち向かっていくスリリングな展開を味わえます。千夜一夜物語の代表作の一つとして語り継がれる訳がよくわかります。残忍な場面は淡々と短く書かれているので、子供でもおびえすぎず、物語として客観視できるかと思いますが、読み聞かせていいか見極めが必要かとも思います。また、 舞台となるペルシアをイメージするのに、この本の絵は助けになります。ふんだんに描かれたアラベスク模様などの雰囲気、なめらかな民族衣装の登場人物、重厚な建物など、繊細に描き込まれた挿絵により、異文化をイメージしながら話を楽しめることと思います。 読み聞かせには時間がかかりますが、いかがでしょうか。 
難しい漢字には振り仮名付きです。
読み聞かせは小学生から、自分で読むならば3、4年生くらいから。

2025/03/16

「蜘蛛の糸」極楽と地獄を描く挿絵も圧巻

 
「蜘蛛の糸」 日本の童話名作選
芥川龍之介 作、遠山繁年 絵
偕成社

悪事を繰り返して地獄に落ちた かん陀多は、 かつて、蜘蛛を踏みつけようとしたものの、可哀想だからと踏まずに見逃したことがありました。
これを思い出したお釈迦様は、 地獄のかん陀多を救うために蜘蛛の糸を差し伸べます。
お釈迦様は、 かん陀多にも良心や抑制心があることに希望を託したのでしょうか。
かん陀多にとっても、たった一つの希望の糸口でありましょう。
しかし、地獄から這い出るために蜘蛛の糸をよじ登るかん陀多は、 我も我もと後に続いて登って来る他の罪人達を邪魔に思い、自分が登りきるためには他人はどうでもよくなってしまいました。
その抑えきれない気持ちは、まさに、 かん陀多が犯してきた数々の悪事の元凶に違いありません。 
そして蜘蛛の糸は切れ、かん陀多達は皆地獄の底に落ちてしまいます。

以上、あらすじに自分の解釈を交えて述べてみました。文豪の明快で簡潔な名作に、私がこれ以上解釈を述べるのはふさわしくありませんので、あとはこの絵本の感想を。感銘した点は、極楽と地獄の対照的な雰囲気の明確な挿絵の表現です。罪人達がもがきひしめく暗い地獄。必死に一筋の蜘蛛の糸にしがみついた後に希望が絶たれる罪人達。その一部始終を見守るお釈迦様がおられる清らかでまぶしい極楽、何事もなかったように優雅に散歩を続けるお釈迦様の柔和なお姿。しかも、地獄の絵からは唸るような叫びやざわめきが、極楽の絵からはお釈迦様の衣のかすれる澄んだ音が聞こえてくるようです。絵本だからこそ、言葉の感覚と絵の効果が相まって、名作を難しく考えずに楽しめます。この絵がなかったら、大人は蜘蛛の糸を読んで、人の心の奥底云々ばかりをのたまうかもしれません。芥川龍之介は「蜘蛛の糸」を子どもが読むように創作したそうです。
原文のまま書かれています。すべての漢字にはひらがなが振ってあります。
中学の教科書にも掲載されています。

2025/02/02

「ピノキオの冒険」の原作

 
カルロ・コルローディ 作、R・インノチェンティ 絵
金原瑞人 訳、西村書店
銀の絵筆賞受賞

ピノキオを読むならカルロ・コルローディ原作「ピノキオの冒険」の完訳版に決まりです!細やかで美しい挿絵は、ピノキオと同じフィレンツェ出身の画家によるものだそうです。黒い布貼りの表紙で紙のケース箱入りという装丁で、イタリアの名作にふさわしいお姿です。日本語訳は歯切れがよく読みやすいです。
子供向けにアレンジした作品とは違い、原作であるこの内容には残酷なエピソードが多々あります。けれども話の展開が速い中でたくさんの笑いと教訓が繰り広げられ、飽きずに早く次々と読みたくなる面白い本です。ピノキオの話がこんなに教訓じみていて、暗いけれども面白く、出来事が次々に起こって読むのが止まらなくなるなんて、原作を読むまで知りませんでした。長い文章ですので読み聞かせするには何日もかかりますが、次読んで!と何度もせがまれました。ただ、ピノキオが追いはぎに遭遇したり吊り下げられたりという場面は、幼い年頃にはトラウマになる怖さですので、無理に読み聞かせず見極めが必要かと思います。また、長い話の中に登場する様々なキャラクターは伏線でもあり、それぞれが後の話の中に再びあらわれ、多方向に展開する話を結び付けながら進んでいきます。私にとって中でも印象的だったのは、コオロギとカタツムリという名脇役でした。
読み終えたら映画「ピノッキオ」と見比べてみても面白いです。映画の方も、これまた話がコロコロと展開します。   
映画「ピノッキオ」DVD

2025/01/24

「雪女」

ひどい吹雪の中、逃げ込んだ小屋の中で雪女を見た巳之吉。
雪女は巳之吉にこう言った。
「ここで見たことを誰にも言ってはいけない、言ったら殺してやる。」
その後、巳之吉は美しくて人柄のいい嫁をもらい、子宝にも恵まれて幸せに暮らした。
ある晩、巳之吉は、ずっと秘密にしていた雪女の話を嫁に打ち明けてしまう。

小泉八雲 作、平井呈一 訳、伊勢秀子 絵
偕成社

雪女の言いつけを破り、秘密を話してしまった巳之吉はどうなってしまうのか? 読み聞かせをすると、子どもたちはそわそわした反応をします。読み聞かせる声色によっては結構な怖さです。ゾクゾクと怖いだけではありません。深い愛情や、はかなく切ない思いの入り混じった物語です。挿絵は、凍りつくような冷たさと美しさが散りばめられていて心に染み入り、読む人を物語に引き込んでいくことでしょう。
この絵本は、日本に帰化した小泉八雲氏がラフカディオ・ハーンの名で英語で書いた作品を、訳者の平井氏が小学生でもわかる言葉で書いたものだそうです。
すべての漢字にはふりがなが振ってあります。

また、伊勢秀子氏のスケッチ画による絵本「ルリユールおじさん」も素敵です。「雪女」とは違うおもむきの画法です。伊勢氏の絵はいずれも物語をぐいぐいと引き立てて気持ちを盛り上げてくれる、読者の想像力を膨らませる絵だと思います。そういう絵本を子どもたちに丁寧に読んであげることは素晴らしいことだと思います。