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2026/06/08

「よあけ」柳宗元の漁翁をモチーフにした絵本

月明かりの中で湖の景色が次第に明け始め、朝日が注ぎ青々とした爽快な緑に包まれるまでを、短くそぎ落とされた言葉とともに描いています。
じっくり眺め、ゆっくりと読む。自然とこうなる、絵本の醍醐味を感じる作品。
唐の詩人、柳宗元の漢詩「漁翁」をモチーフにした絵本。

「よあけ」
ユリー・シュルヴィッツ 作、瀬田貞二 訳
福音館書店



「漁翁」柳宗元

漁翁夜傍西巖宿
暁汲清湘然楚竹
煙銷日出不見人
欸之一聲山水緑
廻看天際下中流
巖上無心雲相逐

「漁翁」を意訳してみました。

年老いた漁師は西岸の岩のそばで夜を明かす。
夜が明け、清らかな湘江の水を汲み、竹を焚いて朝食の支度をする。
朝もやが消えて日が昇ると、そこには姿はもう見えず、
舟をこぐ声がひと声響き、山も水面も緑に染まる。
その声に振り向くと、空と水の境目に、舟が川を下って行くのが見える。
もといた岩の上には、雲がただ流れている。

絵本「よあけ」は、漢詩の4行目までをアレンジしているようです。静かな川辺で夜明けを迎え、舟を漕ぐ音だけが響く風景に朝日が降りそそぎ、あたり一面が緑色になっていく壮大な美しさが描かれています。私はその壮大さは、山の中でキャンプをするようになって実感しました。自然の中で迎えるドラマチックな夜明けは、絵本「よあけ」の爽快さを追体験したようでした。
また、漢詩「漁翁」に出てくる人物は年老いた漁師だけですが、絵本「よあけ」には男の子も出てきます。子どもたちはその男の子に自分を重ねて、絵本の世界に入り込んでいくことができるのでしょう。 
4~6歳から楽しめると思います。小学生にもぴったりです。

原書:
"Dawn"
by Uri Shulevitz, 1974.

2026/06/06

「なみ」簡潔で爽やかな、文字のない絵本

「なみ」
スージー・リー 作
講談社 2009

波の豊かな表情と、波打ち際で戯れる少女を描いた美しい絵本。
「なみ」の表紙からは、飛び交うかもめの声と波の音が聞こえてきそうです。水色一色の波の動きが生きているようにきれいで、目を奪われていきます。少女は始めはおっかなびっくりと、そして次第に気の赴くままに、引いてはやってくる波を楽しみます。波はどんどんと少女に歩み寄り、一緒に遊ぶかのようです。 横に細長い紙面を生かし、この情景を独創的に描く工夫に魅了されます。
文字のない絵本です。

2026/04/16

「わたし」谷川俊太郎さんと長新太さんの絵本

私、やまぐちみちこ。
男の子から見ると女の子。
お母さんから見ると娘のみちこ。
先生から見ると生徒。
キリンから見ると・・・。
アリから見ると・・・。
   
「わたし」かがくのとも傑作集
谷川 俊太郎 作、長 新太 絵
福音館書店 1981

この絵本は、自分を客観的に見る試みを最も単純に教えてくれます。「私」という存在が、様々な人たちから見るといろんな立場にあり、いろんな見方をされていることに気付きます。「自分の世界」から「他者との世界」へと踏み出した子どもたちに。


ただ、時代錯誤感はあります。初版は月刊かがくのとも1976年10月号ですので、人物の格好、色遣い、言葉などの古臭さが気になります。上に載せた画像は楽天ブックスやアマゾンで大きく見られます。
しかしすでに、私が子どもの頃に異様な雰囲気を感じていました。逆にその雰囲気におびき寄せられ、特に後半の「外人から見ると・・・。」「宇宙人から見ると・・・。」の言葉にドキドキさせられたものでした。インパクトが強いですね。

2026/04/14

「三びきのこぶた」

貧しくて子豚たちを育てられなくなった母さん豚は、
三匹の子豚たちを自分で生きていくようにと送り出しました。
子豚たちはそれぞれ、わらの家、木の枝の家、レンガの家を建てました。
そこへ狼がやってきます。
「三びきのこぶた」
ポール・ガルドン 作、晴海耕平 訳
童話館出版 1994
日本図書館協会選定
全国学校図書館協議会選定

狼は1番目と2番目の子豚を食べてしまいます。3番目の子豚は賢く、狼があの手この手でしとめようとするのを上手くかわします。そして終いには、3番目の子豚はしつこい狼をやっつけてしまいます。どのようにしてやっつけたのでしょうか?
この「三びきのこぶた」は昔話に忠実に作られ、食う・食われる関係が包み隠さずに表現されています。ところが3番目の子豚は、しつこく狙ってくる狼に対して知恵を出し、この関係を大逆転させてしまうのです。先ほど述べた「どのようにしてやっつけたのでしょうか?」という問いの答えは、もうおわかりだと思います。
食う・食われるという厳しい現実と、物語だからこそできる大逆転劇が味わえる、数少ない「三びきのこぶた」の絵本です。ポール・ガルドンの愛嬌ある明るい絵で楽しめます。

2026/04/12

「かみひこうき」

「かみひこうき」かがくのとも傑作集―わいわいあそび
小林実 作、林明子 絵
福音館書店 1976
日本図書館協会選定
全国学校図書館協議会選定
厚生省中央児童福祉審議会推薦
厚生省中央児童福祉審議会特別推薦

2種類の紙飛行機の折り方が図説してあり、つばさを工夫することによって飛び方が変わることも説明されています。これを参考にして、自分であれこれ試しながら遊べる紙飛行機遊びに直結します。私も子どもの頃、この絵本を見て紙飛行機を折って飛ばしたものでした。今でも人気があることを知って嬉しく思います。
林明子さんの優しい絵がかわいいです。
話し言葉でわかりやすく教えてくれるので、ひらがなが読めるお子さんなら一人でも読めます。

2026/04/06

「ろくべえ まってろよ」

5人の子どもたちは、 
穴の中に落ちた犬の「ろくべえ」をみつける。
子どもたちが知恵を出し合い、
力を合わせて「ろくべえ」を助け出すまでの物語。
「ろくべえ まってろよ」
灰谷健次郎 作、長新太 絵
文研出版 1975
厚生省中央児童福祉審議会推薦図書
全国学校図書館協議会選定図書
日本図書館協会選定図書
よい絵本選定図書
子どもたちは大人たちに助けを求めましたが、大人たちは素っ気なくて少しも頼りになりません。大人が動かない中で子どもたちは自ら問題解決に挑みます。その姿に希望と頼もしさを感じ、ただ心配するだけでなく、自分にできることを考えて動くことの大切さを教えてくれます。
私が小学生の時に教科書に載っていた物語です。ニュースで穴に落ちた生き物の救出劇を聞く度に「ろくべえ」を思い出します。先日、久々に改めて「ろくべえ まってろよ」を読んだところ、何やら守ってあげたいような助けてあげたいような姿の「ろくべえ」を見て、私も5人の子どもたちの中の一人になった気分になりドキドキしました。長新太さんが描く絵の力も大きいですね。絵本を時々縦にしながら読み進めるようになっているのも楽しいです。

お話会にも良さそうです。
すべてひらがなとカタカナで書かれています。 

2026/03/10

「ちいさいおうち」

田舎の静かなところに、
きれいで丈夫な小さいおうち家がありました。
建てた人はこの家を誰にも譲りたくないほど大切にし、
小さいおうちも自然に囲まれた場所を気に入っていました。
しかし、小さいおうちの建つ田舎は街へと変わっていきます。

「ちいさいおうち」
バージニア・リー・バートン 作、石井桃子 訳
岩波書店 1965
コルデコット賞受賞

田舎の丘の上に建つ「小さいおうち」は、豊かな季節の移り変わりを眺め、家族の暮らしを見守ります。やがてこの田舎は街へと変わり、都会の街に変化を遂げ、「小さいおうち」のある場所だけが取り残されてしまいます。もはや都会の風景の中の異物のような存在です。「小さいおうち」も、ここはもう自分にふさわしい居場所ではないと感じます。主が住まなくなり忘れ去られていく「小さいおうち」はどうなるのでしょう。
物言わぬ「小さいおうち」には心があり、周囲を見て感じています。ものにも愛情を持って大切に思う気持ちが引き出されます。季節や時代の変化を眺めるのも面白いです。優しくかわいらしい色彩の絵は、飾っておきたくなる美しさです。 

日、月、木などの簡単な漢字が用いられ、ふりがなが振ってあります。
小学生の低学年のお子さんの読書にもぴったりです。

「ちいさいおうち」は、表紙が布貼り風の絵本(↑)と、小さいサイズの岩波子どもの本(↓)の2種類があります。

「小さいおうち」岩波子どもの本
バージニア・リー・バートン 作、石井桃子 訳
岩波書店 1954

2026/03/08

「ふたりはともだち」

しっかりもののかえるくんと、のんびり気ままながまくん。
ふたりはお互いを優しく思いやる最高の友だちです。
ふたりの楽しく幸せなひと時、笑ってしまうお茶目な出来事。
互いを敬うふたりの暮らしは、大切な心を教えてくれます。

「ふたりはともだち」
アーノルド・ローベル 作、三木卓 訳
文化出版局 1972

かえるくんとがまくんのシリーズを読むと、温かくて優しい穏やかな気持ちになります。その上、所々笑ってしまうエピソードがあるのが楽しいです。文章も読みやすいです。
全部で次の5話が入っており、小学2年生の教科書に載っている「おてがみ」も含まれています。親世代にも懐かしい話ですね。今読むのにぴったりの「はるがきた」が第1話です。

「ふたりはともだち」に収録の5話: 

 「はるがきた」 
待ちに待った春が来たのに、がまくんはまだ起きません。かえるくんは、何とかしてがまくんを外へ連れ出したくて妙案を思い付きました。

 「おはなし」
夏のある日、病気のかえるくんのために、がまくんはお話をしてあげることになりました。しかし、うろうろしても逆立ちしても、何をしてもお話が思い付かないのです。

 「なくしたボタン」
ふたりが外出から戻ると、がまくんはボタンをなくしたことに気付きました。ふたりは来た道を戻ってボタンを探し、話を聞いた動物たちも協力してくれます。しかし見つかったボタンはどれもがまくんのものではありません。

 「すいえい」
 ふたりは川に泳ぎに行きました。がまくんだけが水着を着ますが、その水着姿は格好悪いので、水着姿で川から出たところを誰にも見られたくありません。そこに生きものたちが、がまくんの水着姿が見たくてやって来ます。

 「おてがみ」
がまくんは手紙をもらったことがないので、手紙を待つ時間は悲しい時間なのです。それを知ったかえるくんは早速がまくんへの手紙を書き、かたつむりくんに手紙を託します。 

2026/03/02

「すばらしい季節」 タシャ・テューダー 作

農場に住むサリーは、季節の移り変わりを全身の感覚を使って確かめます。 
春に咲く花の香り、緑に変わる木々、小鳥のさえずり。
夏には野いちごを味わい、秋にはすべすべのどんぐりを集め、
冬には薪の燃える匂いをかぎます。 

 「すばらしい季節」
タシャ・テューダー 作、末盛千枝子 訳
すえもりブックス

サリーを通して、自然の恵みが一つひとつ丁寧に語られます。季節が移ろうなかで変化する動植物の姿や、農場で営まれる人々の暮らしが、穏やかで喜びに満ちた絵とともに描かれています。日々の暮らしの中で「すばらしい季節」を感じる豊かな気持ち、ささやかなことにも愛おしさを覚える幸せ。これを私も味わい続けていきたいと思わせてくれる作品です。

さて、日本語訳の文章も美しく、小学1、2年生の音読学習にもおすすめです。ただ、漢字がたくさん使われています。使われている漢字は次の通りです。(間違いがあったら教えて下さい。) 

 小学1年生で習う漢字: 
日、目、耳、口、手、花、草、木、森、小、音、土、空、気。

 小学2年生で習う漢字:
 春、夏、秋、冬、場、野、原、鳥、池、黒、雪、牛、夜、星。

 農、葉は3年生。
 季、節は4年生。

また、農場、季節、池、雪、水仙、子猫、牧場、子犬、葉、渡り鳥、夜空、星にはふりがな付きですが、2度目以降にはふりがなのないものもあります。

2026/01/06

「オズのまほうつかい」

フランク・ボーム 原作、木坂涼 文、朝倉めぐみ 絵
フレーベル館 2016
全国学校図書館協議会選定図書

前回は原作に忠実な「オズの魔法使い」をご紹介しましたが、今回はもっとシンプルに絵本で読む「オズのまほうつかい」です。
朝倉めぐみさんのイラストで出版されたと知った時は嬉しかったです。ファッショナブルな絵本で感激しました。この物語の象徴のひとつ、エメラルドの彩りが素敵です。

2026/01/02

「十二支のことわざえほん」

「十二支のことわざえほん」
高畠純 作
教育画劇 2006

ことわざって面白い!という気持ちになること間違いなしの絵本です。十二支にちなんだ22のことわざが紹介されています。22の内訳は、兎、竜、猪は1つずつ、犬は3つ、他は2つずつ。各ことわざには簡潔な説明が添えられおり、細かい解説がなくても、わかりやすくてユーモラスな絵を見れば一目瞭然です。何度も笑いがこぼれます。学びの要素がありながら難しいことがなく楽しめて、内容も厳選されているので1冊丸ごとを一気に読み通せる達成感があるのも魅力です。

幼児からでもだいたい理解できそうです。
特に小学生におすすめです。
漢字にはすべてふりがな付き。
説明文は、「一羽、二羽」以外はほとんどひらがなで書かれています。

2025/12/08

「サンドイッチつくろう」

「サンドイッチをつくろう」かがくのとも傑作集
さとう わきこ 作
福音館書店 1993

楽しいレシピ本のようなロングセラーの絵本です。サンドイッチを作る手順を物語風に描いており、話を読み進めればレシピもわかります。読んでいると、いえ、思い出すだけで食べたくなる王道のサンドイッチが作れますよ。絵本の世界を実際に形にする体験ができます。タイトルの文字も良いですね!

2025/12/06

「ヒギンスさんととけい」

ある日、ヒギンスさんは屋根裏部屋で立派な時計をみつけました。
この時計がちゃんと合っているかどうか調べるには
どうしたらいいだろう?
ヒギンスさんは考えました。
そこで、新しい時計を買ってきました。
ところが・・・。

「ヒギンスさんととけい」
 パット・ハッチンス 作、田中 信彦 訳
ほるぷ出版 2006


時間の移ろいを面白おかしい物語にした絵本です。時計が読めるようになってきたら楽しめます。ヒンギスさんは時刻を確かめるために奔走し、ちょっとしたドタバタ劇になり笑わせてくれます。困りはてたヒギンスさんをようやく救い、感心させたものは!? 最後の「めでたしめでたし」という感覚の結びがすっきりとしていて、私は大好きです。

小学生対象のお話し会にもおすすめです。 
すべてひらがなで書かれています。
音読学習にも読みやすくていいと思います。

2025/12/04

「おまたせクッキー」

お母さんがビクトリアとサムにクッキーを焼いてくれました。 
そこに子どもたちが次々と遊びに来て、 
どんどんクッキーの分け前が少なくなっていき・・・。

パット・ハッチンス 作、乾 侑美子 訳
偕成社

みんなで分かち合うすばらしさを軽やかに温かく描き、最後にあっと言わせる傑作絵本です。 よく見るとクッキーは12枚あります。読み手の子供たちは、ビクトリアとサムのお母さんが焼いたクッキーが12枚であることに気付くかもしれません。分けやすい12枚という便利な数が話をうまい具合に展開させ、最後にはほっとあたたまる締めくくりとなっています。さり気なく知的なお話です。
ついでに、12枚のクッキーを人数で割る、割り算まで教えてしまいましょう!答えは絵本の中に「六つずつだね」「三つずつだ」と出てきます。数って面白い!と思う楽しいひと時になるに違いありません。
というのも・・・、3年生になるとさっそく割り算を習い、まず初めに、まさに次のような問題を考えさせられるからです。 「12枚のクッキーがあります。3人で同じ数ずつ分けると、1人分は何枚になるでしょうか。」 これを習う前に、「おまたせクッキー」を読んでおくというのはいかがでしょうか?

2025/11/30

「いたずたきかんしゃ ちゅうちゅう」

ちゅうちゅうは真っ黒でピカピカ光ったきれいなかわいい機関車です。
後ろの客車や貨車に毎日たくさんの人や荷物を乗せて、 
小さな町の駅から大きな町の駅へ、行ったり来たりしています。
ちゅうちゅうはある日こう考えました。
「思い客車がなければ、もっと速く走れるのに。
そうしたら、みんなは私に注目するのに!」
そして、ちゅうちゅうはチャンスを見計らい、
ひとりで走り出しました! 


「いたずたきかんしゃ ちゅうちゅう」世界傑作絵本シリーズ
バージニア・リー・バートン 作、むらおか はなこ 訳
福音館書店 1961
全国学校図書館協議会選定「必読図書」
全国学校図書館協議会選定「基本図書」
サンケイ児童出版文化賞推薦
厚生省中央福祉審議会推薦



「ちゅうちゅう」は勝手に走り出し、街中大混乱になって人々を怒らせます。終いには道に迷い、力尽きてしまいます。「ちゅうちゅう」は仕事仲間に助けられて温かく迎え入れられ、深く反省するのでした。
野望と失敗、寛容さや教訓が含まれた物語を世界中の人々はどのように楽しんできたのでしょう。私が子どもの頃は、「ちゅうちゅう」が暗く寂しいところに迷い込む場面にはゾクゾクとさせられ怖い印象でした。一方で表紙の裏側のパステルカラーに彩られた街の絵が大好きで、街の線路上を「ちゅうちゅう」が走る空想にふけるのをよく楽しみました。
読み応えのある文章量で、サイズは高さ31cmの大型です。
原書の初版は1937年、日本での初版は1961年だそうです。

 原書:
"Choo Choo"
by Virginia Lee Burton, Houghton Mufflin Company, 1937.

2025/11/26

「いろ いきてる!」

「いろ いきてる!」
谷川俊太郎 文 、元永定正 絵
福音館書店

とりどりの色が、にじんだり溶け合ったり、垂れたりしながら変化していく様子の一瞬をとらえ、見開きで2ページずつ短い言葉とともに掲載されています。それぞれの絵は大胆で、色はジワーッとにじんでいったり、どろりとゆっくり動いたり素早く弾けたり、ぽたぽたと落ちたりしている最中で、動き方や速さが伝わってきます。いいえ、人によって感じ方、想像の仕方は異なりますので、一瞬をとらえたこの絵本の静止画に、動きや速さを連想しないかもしれません。手に取った方はどのようにご覧になるでしょうか。感受性豊かな幼児期のお子さんは、どう反応するでしょうか。
絵の具を使って絵を描く経験の多いお子さん、造形や絵画の教室に通っているお子さんは、「いろ いきてる!」を文字通り実感するかもしれません。また、画用紙と絵の具のセットを用意してこの絵本の世界を試してみたら、様々な色の塗り方を学べそうですね。


2025/11/22

「こぶたくん」

お母さんと一緒にお菓子を焼く幸せな時間。 
妹アマンダの遊びを邪魔するこぶたくんを優しくさとすお父さん。
こぶたくんとアマンダのもてなしに、たっぷり喜ぶおばあちゃん。 
子どもたちの外出の支度にてこずり、泣いてしまうお母さん。
こぶたくんと家族の何気ない日常を描いています。

   
「こぶたくん」こぶたくんのおはなしシリーズ 1 
ジーン・バン・ルーワン作、アーノルド・ローベル 絵
三木卓 訳  童話館


こぶたくんと家族との日常は、読む人に身近な出来事を思い起こさせて共感を呼ぶことと思います。こぶたくんは大人を困らせたり喜ばせたりし、大人と一緒に楽しみを分かち合おうとします。こぶたくんはきっと、どこの家庭の子どもにもそっくりです。また、優しいお母さんがこぶたくんたちに苛立ちを隠せなくなる場面もあり、決して完璧な大人ではないことに親しみを覚えます。お父さんは子どもたちを受け止めるのが上手で、落ち着いて対応するところが頼もしいです。柔らかな文章で、こぶたくんの日常を温かく物語ってくれます。挿絵は「かえるくん」と「がまくん」が出てくるシリーズでも人気の高い、アーノルド・ローベル氏が描いています。

5章からなっています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。
ひらがなとカタカナの他、簡単な漢字(本、日など)だけが使われており、漢字にはふりがな付きです。 

2025/11/20

「恐竜トリケラトプスとギガノトサウルス 南海大決戦の巻」

草食恐竜トリケラトプスたちは緑豊かな新天地に住み、 
平和を保つために肉食恐竜に目を光らせています。
ある時、この新天地に肉食恐竜の群れがやってきました。
カルノタウルスです。
さらに、巨大肉食恐竜ギガノトサウルスもやってきました。 
トリケラトプスたちが翼竜プテラノドンと力を合わせ、
勇敢に立ち向かって群れを守る物語。

「恐竜トリケラトプスとギガノトサウルス 南海大決戦の巻」
黒川 みつひろ 作
小峰書店 2007

恐竜が大好きな子どもたちを魅了する、読みごたえのある絵本です。この絵本の面白さは、何と言ってもたくさんの恐竜たちが躍動する迫力と美しい色彩。そして恐竜たちはちょっぴり可愛らしい表情をしていて愛嬌があります。トリケラトプスを主人公にしたシリーズになっており、シリーズを通して様々な恐竜たちに出会えます。
巻末にはギガノトサウルスとカルノタウルスについての解説が付いており、知識を得ることができます。

すべての漢字にはふりがな付きです。

2025/11/10

「ぞうのババール」こどものころのおはなし

大きな森の国に住むババールは、
お母さんにとてもかわいがれ、とてもいい子に育ちました。
ある日、お母さんは狩人に狙われて撃たれて死んでしまいました。
次に狙われたババールは必死で逃げ、人々の住む街にたどり着きます。
そこでババールは気前のいいおばあさんに出会い豊かに暮らしますが、
それでもさびしく、故郷を思うのでした。
すると・・・。
「ぞうのババール」こどものころのおはなし(1)
ジャン・ド・ブリュノフ 作、矢川寿美子 訳
評論社 1974

突然の母親の死に直面し、悲しみの中を逃げ切った小象 ババールが、やがてみんなに祝福されて象の王になるまでの話です。

漢字は「大」と「子」だけ用いられており、ふりがな付きです。

ババールをおおらかに迎え入れる人間たちや、街での暮らしを経験して森に戻ったババールを敬意を持って受け入れる象たち。温かい仲間に恵まれたババールを取り巻く、豊かな愛情、死、そして一生懸命に生きる楽しみを描いた、ババールのドラマチックな子ども時代の物語です。フランスで1931年に出版され、長く愛されてきました。
ところで、ババールのお母さんが突然命を落とすことに少なからず衝撃を受けるのではないでしょうか。このお母さんの悲劇には、次のような時代背景もかかわっているのではないかと思います。
1914年から1918年までの第一次世界大戦で、フランス北部は激戦地となりパリは空襲を受け、飢餓やスペイン風邪の流行もあり、犠牲者数は甚大でした。身近に人々の死がある中、子ども達の役割として、頼もしく育ちしっかりと大人を支えるよう期待されたそうです。「ババール」を作り上げたジャン・ド・ブリュノフとその妻は、その頃に10代を過ごしました。「ぞうのババール こどものころのおはなし」は、その時代をはっきりと反映していると思います。

作者のジャン・ド・ブリュノフは妻が創作した物語を絵本に仕立て、「ぞうのババール こどものころのおはなし」を1931年に出版しました。その後、「ババールのしんこんりょこう (1932)」「おうさまババール (1933)」アルファベットの本 "L'ABC de Babar"(1934) 、「さるのゼフィール (1936)」を出版しました。翌年に若くして作者が亡くなった後、遺稿をもとに「ババールのこどもたち(1938)」「ババールとサンタクロース (1941)」が出版されましたが、その時10代半ばだったご子息のローラン・ド・ブリュノフも手掛けて完成させたのだそうです。ローラン・ド・ブリュノフはその後、父と同じ学校で絵画を学び、父の創作を引き継いで作風もそっくりに仕立て、数多くのババール作品をつくり続けました。

《 ジャン・ド・ブリュノフの絵本 》

 
ババールのしんこんりょこう(2)

おうさまババール(3)

ババールのこどもたち(4)

ババールとサンタクロース(5)

「さるのゼフィール」なつやすみのぼうけん

2025/11/08

「はなたれこぞうさま」

花売りの男は、売れ残った花をいつもこう言って川へ流していた。
「おとひめさまのところへ行って、かわいがってもらえよ。」
いっこうに花が売れなかったある日、 川を眺めて困っていると、
おとひめさまの使いが現れた。 
使いの女は、いつもきれいな花をくれるお礼に、と、
願いを何でも叶えてくれる子どもを花売りの男に差し出した。
その子どもはいつも鼻をたらしているけれども、
好物のエビなますを食べさせて願い事を言うと、
プーンと鼻をかんで、たちまち願いを叶えてくれるのだった。

「はなたれこぞうさま」
川崎 大治 作、太田 大八 絵
童話館出版 2019

花売りの男は、「はなたれこぞうさま」にエビなますをお供えしてはお米や着物を与えてもらい、あばら家も大きなお屋敷にしてもらい、贅沢三昧して怠けて楽をします。我を忘れ、大事なことも忘れてしまった男の結末は? 
昔話の雰囲気たっぷりの文章で、楽しくテンポよく、読みやすいです。 
グリム童話「漁師とおかみさん」に似た展開で、読み比べるのも面白いと思います。
「はなたれこぞうさま」はいくつかの絵本が出ていますが、太田大八さんの絵はまるで古美術の日本画のようです。 

すべての漢字にはふりがなが振ってあります。