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2026/04/14

「三びきのこぶた」

貧しくて子豚たちを育てられなくなった母さん豚は、
三匹の子豚たちを自分で生きていくようにと送り出しました。
子豚たちはそれぞれ、わらの家、木の枝の家、レンガの家を建てました。
そこへ狼がやってきます。
「三びきのこぶた」
ポール・ガルドン 作、晴海耕平 訳
童話館出版 1994
日本図書館協会選定
全国学校図書館協議会選定

狼は1番目と2番目の子豚を食べてしまいます。3番目の子豚は賢く、狼があの手この手でしとめようとするのを上手くかわします。そして終いには、3番目の子豚はしつこい狼をやっつけてしまいます。どのようにしてやっつけたのでしょうか?
この「三びきのこぶた」は昔話に忠実に作られ、食う・食われる関係が包み隠さずに表現されています。ところが3番目の子豚は、しつこく狙ってくる狼に対して知恵を出し、この関係を大逆転させてしまうのです。先ほど述べた「どのようにしてやっつけたのでしょうか?」という問いの答えは、もうおわかりだと思います。
食う・食われるという厳しい現実と、物語だからこそできる大逆転劇が味わえる、数少ない「三びきのこぶた」の絵本です。ポール・ガルドンの愛嬌ある明るい絵で楽しめます。

2025/11/08

「はなたれこぞうさま」

花売りの男は、売れ残った花をいつもこう言って川へ流していた。
「おとひめさまのところへ行って、かわいがってもらえよ。」
いっこうに花が売れなかったある日、 川を眺めて困っていると、
おとひめさまの使いが現れた。 
使いの女は、いつもきれいな花をくれるお礼に、と、
願いを何でも叶えてくれる子どもを花売りの男に差し出した。
その子どもはいつも鼻をたらしているけれども、
好物のエビなますを食べさせて願い事を言うと、
プーンと鼻をかんで、たちまち願いを叶えてくれるのだった。

「はなたれこぞうさま」
川崎 大治 作、太田 大八 絵
童話館出版 2019

花売りの男は、「はなたれこぞうさま」にエビなますをお供えしてはお米や着物を与えてもらい、あばら家も大きなお屋敷にしてもらい、贅沢三昧して怠けて楽をします。我を忘れ、大事なことも忘れてしまった男の結末は? 
昔話の雰囲気たっぷりの文章で、楽しくテンポよく、読みやすいです。 
グリム童話「漁師とおかみさん」に似た展開で、読み比べるのも面白いと思います。
「はなたれこぞうさま」はいくつかの絵本が出ていますが、太田大八さんの絵はまるで古美術の日本画のようです。 

すべての漢字にはふりがなが振ってあります。

2025/11/04

「てぶくろ」

おじいさんが森の中で落とした手袋の中に
生きものたちが次々と住み込みます。
あっという間に住人は7匹に。
はじけそうになった手袋は、どうなるのでしょう。

「てぶくろ」ウクライナ民話 世界傑作絵本シリーズ
エウゲーニー・M・ラチョフ 絵、うちだりさこ 訳
福音館書店 1965
厚生省中央児童福祉審議会推薦
全国学校図書館協議会選定
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

手袋にはまず、すんなり入りそうなネズミ、カエルが住み込みます。続いて、ウサギ、キツネ、オオカミ、イノシシ、クマが順に入りたいとやって来ます。ウサギの段階で現実ならば無理なところを、絵を見ると画力により心配ご無用に思えてしまいます。さすがに段々と窮屈になっていき、最後のクマが手袋に収まる姿だけは、読者の想像に任せています。また、手袋に生きものたちが入り込むにつれ、手袋が次第に建築物のようになったり、破れそうになっていく変化も凝っていて、何度読んでも飽きません。驚くべき面白さです。同じようなセリフを淡々と繰り返す昔話でありながら、こんなにも豊かに描かれていることで、世界中で長く愛される絵本になったのだと感じました。

2025/09/26

「ももたろう」桃太郎絵本の傑作

「ももたろう」日本傑作絵本シリーズ
松居直 文、赤羽末吉 画
福音館書店 1965
全国学校図書館協議会選定「基本図書」
全国学校図書館協議会第14回推薦
厚生省中央児童福祉審議会特別推薦
第12回サンケイ児童出版文化賞受賞
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

昔話の語り言葉の面白さ、リズムの良さが堪能できる、声に出して読み聞かせるのが楽しい昔話です。桃太郎誕生の背景や征伐への旅立ちがじっくりと描かれており、読みごたえがあります。おじいさんとおばあさんが大切に育てた桃太郎を鬼退治に送り出す姿と、無事に帰って来た桃太郎を喜んで迎える姿に、親としては気持ちが重なります。自信に満ちた桃太郎のたくましい姿は頼もしく、鬼が島へと向かう場面は高揚感と見ごたえがあります。 それから最後に、挿絵を描いた赤羽さんらしい仕込みがあります。

桃太郎伝説は何を例えているのか。簡単に言えば、桃太郎は大和朝廷を、鬼は製鉄技術を意味するとも言われています。世界は鉄を制したところから覇権を握ってきました。国を強く栄えさせる製鉄技術を確保するために、「桃太郎」こと大和朝廷は大義名分を打ち立てて「鬼退治」に行き、「鬼」すなわち製鉄技術を手中に収めたのです。鬼と言えば金棒を持っているイメージがありますが、金棒は彼らの製鉄技術の象徴なのです。この「ももたろう」の絵本にも金棒を持った鬼たちが登場します。そして面白いことに、鬼退治を終えて帰る舟には、桃太郎たちと一緒に赤鬼と青鬼も乗っているのです。これは何を意図しているのでしょうか? 製鉄技術者を連れて来たということでしょう。この仕込みがあるために、数ある桃太郎絵本の中でもこの作品が完璧だと思います。読み解き方はそれぞれですが、どう読み解くかの余韻が、かつて子どもだった読み手が大人になっても響く作品です。

数字は漢字で、他はすべてひらがなで書かれています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。

2025/09/18

「ねずみのよめいり」

きれいで気立てがよく育った大事な娘を、
父さんネズミは、世界中で一番偉いものに嫁にやろうと思いました。
母さんネズミは、世界中を照らすお日さまが一番偉いと考えました。
さっそく、父さんネズミはお日さまに頼み込みに行きました。

「ねずみのよめいり」
小澤俊夫 再話、金井田英津子 絵
くもん出版 2007

定番の昔話が、ロマンチックで温かい素敵な絵本に!「ねずみのよめいり」の絵本はこれが一押しです。
父さんネズミと母さんネズミが娘を大事に思う様子が、温かい雰囲気に包まれて描かれています。嫁ぎ先を求め、まずは太陽のもとへ、次に雲のもとへ、と転々と頼みに行く父さんネズミはとても丁寧で、「一番偉いものに嫁にもらって欲しい」という大胆な頼みをしているのに好感が持てます。柔らかく優しい細やかな絵の中で、光と影の明暗が美しく印象的です。版画を所々用いているところも面白いです。

用いられている漢字は、大、家、子、生、父、母、日、空、雲、風で、ふりがな付きです。文字は大きく、文章は読みやすく美しいです。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。

2025/09/12

「にぎりめしごろごろ」

おじいさんがにぎりめしを食べようとすると、
にぎりめしはお地蔵様のところへ転がって行きました。
おじいさんは にぎりめしをお地蔵様に差し上げ、
お地蔵様のお告げに従ってお堂に隠れます。
すると、夜中にお堂の前に鬼たちが来て酒盛りを始めました。
おじいさんはお地蔵様から鬼たちの置き土産をもらい、家に帰ります。
それを知った欲張りでぶしつけな隣のおじいさんとおばあさんは、
真似をしてみるものの、哀れな結果となってしまいます。

「にぎりめしごろごろ」こどものとも傑作集
小林輝子 再話、赤羽末吉 画
福音館書店 1994

 

「むかし、あったけずおん。きこりの じさま、すんでいたっけと。」
このような語り口で書かれ、声に出してゆっくりのんびりと読みたくなる昔話です。横長の紙面に伸びやかに描かれた絵はわかりやすくて楽しく、登場するキャラクターの豊かな表情が話を面白くしてくれます。
小学1年生の教科書に採用された「おむすびころりん」と同じような話です。「おむすびころりん」では、おじいさんのおむすびがネズミの巣穴に転がり落ち、追いかけたおじいさんはネズミにもてなされます。おじいさんはお土産に小槌をもらい、小槌を振るたびにお米や小判が出てきて、おじいさんとおばあさんは幸せに暮らします。「おむすびころりん すっとんとん ころころころりん すっとんとん」と繰り返されるのが楽しく、かわいらしい話です。欲張りなおじいさんとおばあさんは出てきません。
欲張りじいさん、ばあさんに登場して欲しいならば、「にぎりめしごろごろ」を! 面白いですよ。

2025/06/12

日本の神話 第六巻「うみさち やまさち」

兄の海幸は海の魚を釣るのが仕事。
弟の山幸は獣を捕るのが仕事。
ある日、山幸は、海幸に仕事取り替えようと申し出て、喜んで海へ行く。
ところが、獲物はかからず釣り針もなくしてしまった。
海幸は怒り、山幸が自分の剣で釣り針を作って差し出しても受け取らない。
山幸が浜辺で泣き暮れていると、潮の流れを司る神が現れ、山幸を小舟に乗せて海の神・綿津見(わたつみ)の神の宮殿へと導いた。
海底の宮殿で山幸はもてなされ、綿津見の姫を嫁に迎えた。
幸せな暮らしが三年経ち、山幸は釣り針の話を打ち明ける。
すると綿津見の神は釣り針を見つけ出し、海幸に返すよう言い渡すと共に、
いざという時に使うよう、潮満玉と潮乾玉を授けた。
山幸はサメに乗って国へ戻り、釣り針を海幸に返す。
水を操る綿津見の神は海幸の田に水を与えず、海幸は困窮し、山幸を討とうとする。
その度に山幸は潮満玉で水を呼んでは海幸を溺れさせ、 潮乾玉で水を引かせては命を救った。 
海幸はついに降参し、山幸の宮殿に仕える者となった。

 
赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房

海底の宮殿の絵について、折込付録に説明があります。山幸が海底の宮殿から帰るのに乗ったサメの泳ぐ速さとして「一日で浜まで泳ぎ着くことができる」というくだりがあることから、南方の海宮として描かれたそうです。海底の描写はパッと鮮やかで華やかです。
この第六巻「うみさち やまさち」が「日本の神話」の最終章です。日本の絵本に貢献された赤羽氏の絵による、膨大な資料と現地取材による考察をもとに作られた6冊は、古事記に記された日本の文化を知り、伝えるのに役立ちます。

赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房

2025/06/10

日本の神話 第五巻「すさのおとおおくにぬし」

黄泉の国に到着した大国主は、先祖であるスサノオを訪ねた。 
出迎えたのはスサノオの一人娘、須勢理姫(スセリヒメ)。
須勢理姫は一目で大国主に心を奪われた。 
これを見抜いたスサノオは、大国主を蛇の部屋へ通させた。 
部屋では蛇の群れが大国主に襲い掛かろうとしたが、 大国主は姫からもらった「蛇の布」で蛇を見事に退治した。 
その後もスサノオは次々と試練を与えたが、大国主は切り抜け、ついにはスサノオを感服させることとなった。 
大国主は姫を連れて出雲に戻り、兄弟である八十神たちを追放。
末永く国を治めたという。

赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房

豪快なスサノオと、どっしり落ち着き頼もしい大国主との駆け引きが面白い神話です。

2025/06/08

日本の神話 第四話「いなばのしろうさぎ」

荒くれ者として知られるスサノオの子孫にも、大国主という気立ての良い神がいた。
大国主には八十神と呼ばれる兄弟達がおり、因幡の国の八上姫を嫁に迎えるため、皆で出雲の国を旅立った。
やがて八十神たちは皮をはがれたウサギに出会う。
彼らはウサギに、「海水で体を洗い、風にさらされれば元通りになる」と教えて立ち去った。 
それを信じたウサギは苦しみ、そこに遅れて大国主が通りかかった。
ウサギは、サメをだましたために皮を剥ぎ取られたのだと告げた。
大国主はウサギの体を治す方法を教えると、ウサギは回復し、「八上姫を嫁にするのは大国主だ」と伝えた。
やがて、八上姫が大国主に嫁ぎたいことを知った八十神たちは、大国主の命を執拗に狙う。
逃げ場をなくした大国主は、スサノオのいる黄泉の国へ向かう決意を固めた。

 
赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房


「いなばのしろうさぎ」に登場するワニについては諸説ありますが、赤羽氏は出雲での取材を経て、最終的にワニ鮫というサメとして描くことに決めたそうです。サメの姿で描かれていることで、違和感がなくわかりやすいと感じました。また、「しろうさぎ」は真っ白ではなく、薄い茶色で描かれています。この色合いも考察を重ねられたうえに決定されたそうです。いずれも折り込み付録で詳しく解説されています。
私自身、「いなばのしろうさぎ」といえば真っ白のウサギが出てきて、日本の海にワニが出てくる、という印象がありましたが、この絵本と折り込み付録の解説を読み、秘密を教えてもらったような嬉しい気持ちになりました。膨大な資料を手繰り寄せて絵本を作って下さった赤羽氏と舟崎氏に感謝の気持ちでいっぱいです。鋭い子どもたちにも、どうしてワニが?? と聞かれずに楽しんでもらえる話です。

2025/06/06

日本の神話 第三巻「やまたのおろち」

高天の原を追われたスサノオは、地上を旅して出雲の国にたどり着いた。
そこで、櫛稲田姫が「やまたのおろち」のおとりとなることを知る。
スサノオは姫を救うため、おろち退治に挑む。
スサノオは太刀でおろちを切り刻むと、その尾から剣が現れた。
この剣をスサノオは天照大御神への詫びとして献上し、
姫を妻に迎えて出雲で幸せに暮らしたのだった。

   
赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房


日本の神話全六巻のうち「やまたのおろち」は第三巻ですが、最初に制作された作品だそうです。折り込み付録によると、従来は「やまたのおろち」は蛇として描かれるのが通説だったところを、赤羽氏は膨大な文献の調査と現地取材を重ね、龍蛇として描くことに決めたそうです。櫛稲田姫についても、従来は櫛に変化(へんげ)しスサノオの髪に身を隠す描写が一般的でしたが、現地取材に基づき、変化させず、おとりとして立つ姿で描くことに決めたのだそうです。また、登場する一般人の服の色も従来とは異なり、麻色に根拠をもって設定。おろちを迎え撃つ酒の造り方にもこだわりが込められています。

2025/06/04

日本の神話 第二巻「あまのいわと」

激しく荒れくれて世の中をすさませたスサノオは、
天照大御神の治める高天の原をも荒らし、
見かねた天照大御神は天の岩戸に身を隠してしまった。
日の神、天照大御神が消えたことにより、世の中は闇に包まれて混乱する。
高天の原の神々は知恵を結集し、ようやく天照大御神を岩戸の外へ導き出すと、世の中は光を取り戻し、秩序がよみがえった。
スサノオは高天の原を追い払われてしまうこととなった。

赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房


荒れ狂うスサノオと神々しく潔い天照大御神。また、世の民の闇への失意と、太陽への恩恵の念と崇拝。対照的な話の筋が面白い神話です。 

2025/06/02

日本の神話 第一巻「くにのはじまり」

天の彼方に神の国、高天の原(たかまのはら)があり、そこは天之御中主(あめのみなかぬし)の神が治めていた。
その子孫である男神 イザナギと女神 イザナミは、天と地の間にかかる天の浮橋に立ち、天の沼矛(あめのぬぼこ)を使って海をかき混ぜた。
すると海上にオノゴロ島が生まれ、二人はそこに降り立ち結婚し、多くの子ども達 ―― 島々と神々が生まれた。
しかし、イザナミは最後に火の神を生んでやけどを負い、命を落として黄泉の国へと旅立ってしまった。
悲しんだイザナギは黄泉の国を訪れるが、そこで腐り果てたイザナミの姿を目にする。
怒ったイザナミは女鬼や雷神にイザナギを追わせるも逃げ切られる。
ついにはイザナミ自ら追いかけようとしたが、イザナギは黄泉の国を脱出し、出入り口を岩でふさいで閉ざした。
岩を隔てて、イザナミは「一日に千人を殺す」と言い放ち、イザナギは「一日に千五百人を生ませる」と言葉を交わす。
こうして世では、一日に千人が死に、千五百人が生まれるようになったという。
イザナギは水辺で死者の国のけがれを洗い清めると次々に神が生まれた。
中でも天照大御神には高天の原を、月読神には夜の国を、スサノオの命には海上を治めさせた。
赤羽末吉 絵、舟崎克彦 文
あかね書房


日本の神話は全六巻からなり、第一巻が「くにのはじまり」です。最初に出版されたのは第三巻「やまたのおろち」で、第一巻は最後に出版され、着手後7年目に全巻が完成したそうです。古事記を絵本化するにあたり、赤羽氏らは膨大な資料を解釈し、時間と情熱をかけて作成されました。日本の神話を絵本で読むならば、この全六巻が最も深く語りかけてくると思います。
私が子供の頃に読んだ本のイザナギを追うイザナミの絵は恐ろしく、怖い印象が強く残ってしまいましたが・・・、赤羽氏の絵はそんなに怖くはありません。怖さよりも物語をわかりやすく語る絵だと思います。
折り込み付録の中で赤羽氏は、絵本の絵について、「絵は文の言わんとすることを掘り下げて、それを絵画的にイメージアップさせて、そのドラマの心を読者に訴えるものでなくてはならない」と書かれています。視覚的にドラマの核心をつくよう演出するのだそうです。赤羽氏の絵によって物語が読み手にまっすぐ届くのは、その演出の効果なのですね。

2025/04/18

「かちかちやま」日本傑作絵本シリーズ

じいさまは畑でタヌキを捕まえてきた。 
ばあさまにタヌキ汁を作るようにと言い、じいさまは出掛けた。 
ところがばあさまは、タヌキに打ち殺されてしまうのだった。 
じいさまが悔しくて泣いているところにやって来たウサギは、 
かたきをとってやることにした。 

「かちかちやま」 日本傑作絵本シリーズ
小澤俊夫 再話、赤羽末吉 画
福音館書店


タヌキに殺されたばあさまは、タヌキ汁ならぬ「ばあ汁」にされてしまいます。タヌキはばあさまに化け、帰って来たじいさまは、ばあ汁をそれとは知らずに食べ尽くしてしまいます。この残酷な話を隠さずに語っている。これぞ「かちかちやま」。ばあさまのかたきをとってやる事にしたウサギは、タヌキを何度もだましてはひどい目にあわせた上にやっつけてしまいます。ウサギのじわじわとして執拗な復讐劇は、哀れなばあさまの話を抜いては成り立ちません。 貴重な「ばあ汁」の話が盛り込まれているだけではありません。この「かちかちやま」ほど、文章も絵もわかりやすいものはないと思います。文章は一文字も削れないほど無駄がなくすっきりしていて読みやすく、絵は、赤羽氏の作品はどれもそうなのですが、見やすくてストレートに話の内容と面白さが伝わってくるのです。

2025/03/12

「王子さまの耳はロバの耳」 おはなしのたからばこ13

ある国の王様の元に待望の王子様が生まれました。
 王子様は人に優しくて賢く、人の話をよく聞くように育ちました。
しかし、王子様はいつも帽子をすっぽりとかぶっているのでした。 

 
「王子さまの耳はロバの耳」 おはなしのたからばこ13
 岡田淳 作、はたこうしろう 絵
フェリシモ 2009年11月
絶版になりました

ポルトガル民話が元になっている物語です。とてもいい絵本ですよ!
王子さまの大きなロバの耳を見た者はみな仰天し、聡明な王子さまの本質に触れることなく去っていきます。しかし、王子さまが自分を真に見つめ直した時、同様に王子さまを真に見つめてくれる人に巡り合います。
岡田淳さんが民話を再構築するとこうなるのかと、何だかときめきました。ドキドキする滑らかな文章を追いながら王子さまの心の成長を見守り、ラストで爽快な満足感が得られる点は、岡田淳さんの他の作品の印象と似たものがあると思いました。はたこうしろうさんの甘めのトーンのイラストは清らかな雰囲気やユーモアが入り混じり、多様な人間模様が楽しめます。

2025/01/18

昔話 "The Teeny-Tiny Woman" を読み比べ

昔話 "The Teeny-Tiny Woman" を読み比べてみました。 小さい小さい家に住む、小さい小さいおばあさんの話です。

 
ポール・ガルドン 絵、
晴海耕平 訳
童話館
絶版になりました

イギリスの昔話です。「ちいさい ちいさい」という形容詞が繰り返される、読んで聞いて楽しいリズミカルな文章です。しかし内容は怖いんです。
――ちいさいちいさいおばあさんは墓地で骨を拾って持ち帰り、戸棚にしまいます。ベッドに入り眠りかけた時、戸棚から声が聞こえてきました。――
果たして、おばあさんがとった行動とは!? 結果は、面白いんですよ。でもやはり、声色を怖くすると子どもはおびえるかも知れませんので加減してくださいね。
原作の "The Teeny-Tiny Woman: A Ghost Story" は英語学習をされているお子さんに楽しんでもらえそうです。teeny-tiny (ちいさいちいさい)が繰り返され、愉快です。
他に、人気の画家トミー・デ・パオラ の描いた「ティーニイタイニイ ちいちゃいおばちゃん」(ジル・ベネット 作 偕成社)も同じ話です。優しい絵がとてもかわいらしいです。

また、スウェーデンのエルサ・ベスコフも、昔話をもとに「ちいさな ちいさな おばあちゃん」を絵本にしています。上記のイギリスのものとは異なり、こちらはまったく怖い話ではありません。
 エルサ・ベスコフ 作、石井登志子 訳
偕成社
絶版になりました

あたたかい色使いで、ちいさなちいさなおばあちゃんの素朴な暮らしが語られています。ゆったりと静かな時間が感じられます。ところが、おしまいにおばあちゃんがその静寂をちょっと破るのです。スウェーデンの昔話なのでしょうか? 作者がアレンジしたものなのでしょうか? あとがきに経緯が書いてあるものの、どこの昔話なのかは明記されておりません。なお、あとがきによれば、これは1897年に出版されたベスコフのデビュー作で、ビアトリクス・ポターの「ピーターラビットのおはなし」が出版される4年前のことだそうです。

2024/12/14

「きつねとうさぎ」無敵のキツネに立ち向かうオンドリが見もの

キツネの家はピカピカの氷の家。
ウサギの家は木の皮の家。
春になりキツネの氷の家が溶けると、キツネはウサギから木の皮の家を取り上げ、 住み着いてしまいました。
家を追い出されたウサギに出会った動物たちは、
キツネを木の皮の家から追い出しに行きますが・・・

「きつねとうさぎ」 世界傑作絵本シリーズ
フランチェスカ・ヤールブソワ 絵
ユーリー・ノルシュテイン 構成
児島宏子 訳
福音館書店

ロシアの昔話だそうです。 ロシアの民族情緒あふれる洒落た作風です。登場する動物たちはとぼけた表情をしたぬいぐるみのように描かれ、人形芝居のようにコミカルな印象です。大きくて力の強いオオカミ、クマ、ウシが太刀打ちできなかったキツネに、オンドリが勇ましさとアイデアで立ち向かうのが見ものです。繰り返しのセリフと意外な展開が面白いです。 
漢字は「木」だけ使用されており、振り仮名付きです。カタカナは少しだけ出てきます。小学1、2年生の音読にもちょうどよいと思います。読み聞かせは2~4歳から楽しめると思います。

2024/12/12

「3びきのくま」ロシア民話をロシアの雰囲気で楽しむ

森へ遊びに行って道に迷った女の子は、 小さな家をみつけて入りました。 実は、この家は3匹のクマの家族が住む家。 クマたちは散歩に出かけていて留守だったのです。 女の子はテーブルの上にあった3匹分のスープを一口ずつ飲み、 3つの椅子の一つずつに腰を掛け、 3つのベッドの一つずつに入り、 一番小さなベッドで眠ってしまいました。 そこに、お腹をすかせたクマの家族が帰ってきました。

トルストイ 作、バスネツォフ 絵、おがさわら とよき 訳
福音館書店 1962年5月発行

いくつも出版されている人気ロシア民話の「3びきのくま」。中でも私のいちおしの絵本がクラシックでロシアの雰囲気が素敵なこの作品です。クマの家族構成は、とても大きなお父さんクマのミハイル・イワノヴィッチ、少し体の小さいお母さんクマのナスターシャ・ペトローブナ、小さなクマの子のミシュートカの3匹。名前が付いているのでクマの存在感が高まり、尊厳まで感じられる気がしてきます。それでいて、とぼけた表情のクマ、という挿絵がなんだか魅力的です。
それから、「誰だ、私のスープを飲んだのは」「誰です、私のスープを飲んだのは」「誰だい、ぼくのスープをのんでしまったのは」という3匹の同じような言葉の繰り返しが楽しく読めます。繰り返しとはいえ、状況によって少しずつ言葉が変わるので飽きません。そして話が盛り上がってすぐに物語が終結するのも潔くって面白いです。
次回も、「わしの椅子に座っとったやつは誰だ?」「わしのパンを食べとったやつは誰だ?」というような繰り返しのセリフの出てくる絵本について書こうと思います。

すべてひらがなとカタカナで書いてあります。

 

2024/12/04

「しょうがパンぼうや」

おばあさんがしょうがパン(ジンジャーブレッド)を焼き上げると、 
しょうがパンぼうやとなって走って逃げ出してしまいました。 
おばあさんはおじいさんと一緒に追いかけます。
しょうがパンぼうやに出会った人や動物たちも追いかけます。
そしてついに・・・・。
 ポール・ガルドン 作、多田裕美 訳
ほるぷ出版 

このいたずらな目つきの表情で駆け抜ける「しょうがパンぼうや」の姿が愉快でたまりません。人の形をしたクッキーの型で焼くジンジャーブレッドマン。欧米ではクリスマスの頃に焼くのだそうです。そしてジンジャーブレッドマンの楽しい昔話も、みんなが大好きな話なのだそうです。私も、大好きなポール・ガルドンが描く「しょうがパンぼうや」がとても気に入っています。
この話とそっくりなロシア民話「おだんごぱん」も人気で面白いのですが、クリスマス近くになったら「しょうがパンぼうや」を読んで、親子でジンジャーブレッドマンを焼いてみるのも楽しいですね。
「おだんごぱん」ロシアの昔話  日本傑作絵本シリーズ
せたていじ 作、わきたかず 絵
福音館書店