2025/05/30

「バムとケロのにちようび」

外遊びができない雨の日。
すっきり快適な部屋でおやつをつまみながら
至福の読書タイムを、と思い立つ犬のバム。
その前にカエルのケロが散らかした部屋をきれいにして・・・
と思うのですが思うようにいかず、
慌しいドタバタ劇が始まります。

「バムとケロのにちようび」
島田ゆか 作
文溪堂 1994

笑顔がこぼれる楽しいひと時をくれる絵本です。雨の季節にいかがでしょうか。
しっかりきちんとしたバムと、いたずらっ子のケロのコミカルな振る舞いが楽しいです。遊び心満載の物語をますます面白くする小細工の効いた絵が楽しくて、何度読んでも笑ってしまいます。明るくきれいな色使いも素敵です。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。

2025/05/28

「カエルくんのみずたまり

雨上がりに大きな大きな水たまりができました。
カエルくんが水たまりに入ろうとすると不思議な出来事が起こり、
カエルくんは震え上がります。
そこにウシガエルくんがやってきて、またも不思議なことに!

「カエルくんのみずたまり」
西宮達也 作・絵
すずき出版 2007

カエルくんは震え上がりますが、読む人にとっては愉快で楽しい絵本です。単純だけれど突飛で豪快な描写がアッと言わせてくれます。そして、アッという間に子どもたちを笑顔にしてくれます!

2025/05/26

「雨、あめ」文字のない絵本

空が雨雲に覆われ、雨が降り注ぎました。
庭で遊んでいた姉と弟は急いで家に入ります。
すると雨具を身にまとって大きな傘をさし、
二人はまた外へ出かけました。
雨降る中を楽しむために。
「雨、あめ」
ピーター・スピアー 作・絵
評論社 1984

文字のない絵本です。
ザァーザァーと降り注ぐ雨の絶え間ない音。雨どいから滝のようにあふれ落ちる雨水を傘で受け止める音、水たまりを思いきり踏みつける音。雨が降ると様々な音が合唱することに気付かされ、聞こえてくるような絵です。なんと楽しい雨の日の絵なのでしょう。お母さんはにこやかに子どもたちを雨の中へ送り出し、子どもたちは水浸しの町をちょっと冒険をするように散歩します。まるで雨の楽しみ方を教えてくれるかのように、雨の中の面白さを次々に見せてくれます。雨の日は家の中で、とは限らないのですね。また、優しくのびのびとした温かい家庭の様子も素敵に描かれており、良い影響を与えてくれます。いい家族だな! 見習おう! 読む度にこんな気持ちになります。 

原書:
Peter Spier's RAIN, by Peter Spier, Doubleday, 1982.

2025/05/24

「タツノオトシゴ ―ひっそり くらす なぞの 魚―」

タツノオトシゴって、どんな生きもの?
泳ぎ方、敵から身を守る術、求愛や繁殖の仕方など、
タツノオトシゴの魅力的な独特の暮らしを教えてくれる、
楽しく上質の科学絵本です。

 
「タツノオトシゴ ―ひっそり くらす なぞの 魚―」
クリス・バターワース 文、ジョン・ローレンス 絵
佐藤見果夢 訳
評論社 2006

愛嬌ある姿のタツノオトシゴ。漢字で書くと、姿が竜に似ていることから「竜の落とし子」。英語でいうと、顔が馬に似ていることから "Seahorse"。不思議な姿の生き物に見えますが魚の仲間だそうです。 
細やかな木版画と心安らぐ色彩で表現した絵が美しく、版画好きの私は何度見ても飽きません。細やかな模様のあちこちに目移りしてしまいます。内容も子ども向けとはいえ侮れません。この絵本を読み、タツノオトシゴは用心深い習性を持つことを知り、その個性的な姿は、身を守るために実に上手い具合にできているのだと納得しました。

すべての漢字には振り仮名付きです。
魚が大好きな年長さんくらいから小学生にぴったりです。
また、小学4年生頃から、彫刻刀を用いた木版画の授業が始まります。この絵本の木版画はかなり凝っていますが、小学生でもその技術と表現を参考にし、模してみる価値はあると思います。

2025/05/22

『うみのむこうは』

砂浜に立って海を眺める女の子の後ろ姿。
女の子はじっと立ったまま、 海の向こうには何があるのかなと思い巡らせます。

   
 五味太郎 作
絵本館 
 

下から3分の1の女の子と海の絵は、表紙から最後まで同じです。上から3分の2の空の部分を白いキャンパスに見立てるようにして、女の子は「キャンパス」いっぱいの空想を描いていきます。水平線上の船がページをめくるたびに進んで行き、時間の流れを感じさせてくれます。最後の方で女の子が思い描く「だれか」の場面が私はとても好きで、ぜひとも手にとって読んでみて欲しいとお勧めします。ここで一気に心が捕らえられることでしょう。
誰もが子どもの頃、同じように空想に浸ったことがあると思います。再びそれを疑似体験したり、共感したりできる素敵な絵本です。絵はどのページも額縁に入れて飾りたいような美しさで感銘を受けます。私の手元にある『うみのむこうは』は古い月刊「かがくのとも」(福音館書店)で、経年のため茶色っぽくなっていますが、大事に読み継いでいます。

文は1~2歳くらいからでもわかるシンプルなものです。
味わいを噛みしめられるようになるのはもっと先のことかも知れません。
また、自分で音読を始める頃に選ぶ本としてちょうどよさそうです。

2025/05/20

「ゆかいな かえる」

ゼリーのような卵からオタマジャクシがかえる。
後ろ足が生え、前足が生え、しっぽが縮みカエルになる。
4匹のカエルたちは楽しく戯れ、外敵から身を隠し、
トンボの卵や水草を食べたりして過ごす。
夏には夜通し歌い、冬は冬眠のため土の中へ。

「ゆかいな かえる」
ジュリエット・キープス 作、石井桃子 訳
福音館書店

 
 愛嬌あるカエルたちの1年の暮らしが、のびのびと愉快に描かれた作品です。知られているようで馴染みのないカエルの生態が紹介されており、落ち着いた色使いの青と緑だけで表現されています。生きものを愛するお子さんにぜひ読んであげたい楽しい絵本です。

2025/05/18

「ともだちがほしかったこいぬ LONESOME PUPPY」

ぼくはいつも独りぼっちで寂しかった。 
本当だよ。
どうしてかと言うとね ――。

「ともだちがほしかったこいぬ LONESOME PUPPY」
奈良美智 作
マガジンハウス 1999

この「こいぬ」が寂しかった理由は、その存在が世間一般とかけ離れていているから。けれども、そんな「こいぬ」に振り向いて興味を示し、戸惑いながらも心地良く接してくれる女の子が現れました。「こいぬ」と女の子との程良い関係をほほえましく感じます。
ひと目で奈良氏の作品とわかる強烈な表情に圧倒されつつ、優しい色合いでキュートな癒しの絵もあり、ファンは楽しめることと思います。

2025/05/16

「ないた」

転んで泣いた。
ぶつけて泣いた。
どうしてぼくは泣くんだろう。
どうして大人は泣かないんだろう。

「ないた」
中川ひろたか 作、長新太 絵
金の星社 2004
第10回日本絵本大賞受賞

事ある度に泣く「ぼく」が、大人の泣かない姿を見て感じた思い。これが、絵本「ないた」のテーマになっています。痛くても怖くても、悲しくても嬉しくても、素直に気持ちが込み上がって泣く「ぼく」も、大人になったら泣かなくなるのかな?と考えます。
誰かが泣く姿を受け入れて見守る姿勢は大事なのだなと、知らされました。

2025/05/14

「おやすみなさいフランシス」

7時です。
フランシスの寝る時間です。
お父さんとお母さんにおやすみのキスをしてもらい、
フランシスは目をつむります。
けれども、フランシスはちっとも眠れません。

 
「おやすみなさいフランシス」世界傑作絵本シリーズ
ラッセル・ホーバン 文、ガース・ウィリアムズ 絵
松岡 享子 訳
福音館書店 1966
サンケイ児童出版文化賞推薦
厚生省児童福祉審議会推薦
全国学校図書館協議会選定
 

眠れないフランシスは部屋のあちこちに何かがいると想像して怖がり、何度も両親のところへ行って訴えます。その時のお父さんのリアルな表情と丁寧な対応がとてもいいです。また、フランシスの要求を受け入れるか断るかについて、両親ともに同じ考えで明確で、素晴らしいと思いました。やさしい描写と優しく柔らかい色使いは、温かい家庭の雰囲気そのままですね。

2025/05/12

「プアー」赤ちゃんから楽しめる愉快な本

1匹の犬のからだが、 プアーっと、少しずつ、あちこち膨らんでいきます。 どんどん膨らんでいき、 しまいにはどうなってしまうのでしょう!?

長新太 作/絵、和田誠 仕上げ
福音館書店



18cm 四方の絵本です。かわいらしい犬が変形していく様子が滑稽で和みます。日本の伝統色を思わせる色彩のポップで洒落た組み合わせが、いっそうかわいらしさを引き立てていると思います。この絵本の後ろの方には、「長新太さんが亡くなる数ヶ月前に描いたラフスケッチに、和田誠さんが色を付けて完成させた」と記されています。 
ところで、私は小さい頃に、長新太さんの「ごろごろにゃーん」をボロボロになるまで読みました。得体の知れない不思議な「ごろごろにゃーん」の旅の最後に、何事もなかったように帰って行く猫たちの図太く安定感のある、ほっとする雰囲気。「プアー」の最後の場面でも、「ごろごろにゃーん」のように、ほっとさせられました。 笑みのこぼれる、愛すべき、愉快な絵本です。

2025/05/10

「おばけパーティ」人気者のおばけたち

古いお城に住むおばけのアンリは、友達みんなを晩餐会に招待しました。
アンリはフルコースの料理を次々に出し、みんなをもてなします。
それからみんなで洗い物をして、食後の飲み物を楽しみます。
すると・・・、アンリはどこ?
おばけたちが震え上がります!
ジャック・デュケノワ 作、大澤晶 訳
ほるぷ出版


幼児期の子ども達に大人気の絵本です。おばけたちは白い布をまとったような姿をしており、怖くなくかわいらしい。晩餐会が始まると、みんなはおばけなので、壁を通り抜けたり、飲んだり食べたりしたのもと似たような色や形になったり、透明になったりします。でも、うまい具合に元の白い姿に戻ります。と思ったら、また!!  おばけたちの不思議な変化が、子ども達にはとても楽しい様です。おばけたちの明るく優しい色合いが黒い壁に映え、きれいです。 文章も簡単で短く、あっという間に読み終えてしまいます。けれども、子ども達にとっては満足度が高く見ごたえのある絵本だと思います。おしゃれ度と発想力の高さがお見事です。少しの時間だけ読み聞かせをしたい時にもちょうどいいです。

2025/05/08

「わたしとあそんで」自然の中に溶け込む喜び 

「わたし」は原っぱへ行きました。
遊ぼうと思って生きものたちを捕まえようとすると、
どの生きものも逃げて行ってしまいました。
仕方なく池のそばでじっと静かにしていると、
逃げた生きものたちは、「わたし」のそばに次第に戻って来ました。
みんなが遊んでくれて、「わたし」はとっても嬉しいのです。

マリー・ホール・エッツ 作、与田準一 訳
福音館書店

 

虫や鳥、動物を捕まえようとする時、たいてい逃げられてしまいます。誰もが経験していると思います。
あいにく私には、この絵本の「わたし」のように野生生物に優しく囲まれた経験がありません。ただ、自然の中に座り込んでゆったりと辺りを見渡す時の、風を感じ、木の葉の擦れる音、鳥のさえずりを聞き、虫が地を這い宙を舞うのを愛でる、満たされた感覚は知っています。これも誰もが経験しているのではないでしょうか。こういう感覚も、自然の中に溶け込んでいると実感するささやかな喜びの一つです。
「わたし」の喜びには及ばなくても、この絵本のメッセージは読む人の様々な経験を思い出させ、気持ちにスッと入ってきます。

2025/05/06

「くまとやまねこ」

仲良しの小鳥を亡くしたクマは、 突然の悲しみで心がつぶれそうな毎日です。
クマに出会った森の動物たちは、クマの事情を知ると、
決まって小鳥のことは忘れるようにと言うのです。
とうとうクマは、家に独りこもるようになってしまいます。
ある日、いい天気につられて外に出たクマは山猫に出会います。
山猫はクマの深い悲しみを感じ取り、クマを慰めます。
山猫のおかげで小鳥との満ち満ちた日々をようやく確認したクマは、
小鳥のいない生活への新しい一歩を踏み出します。

湯本香樹実 文、酒井駒子 絵
河出書房
講談社出版文化賞絵本賞受賞



別れと向き合うという重いテーマについて、一つの答えを見せてくれる絵本です。繊細で美しい挿絵とともに、生と死や心が描かれています。ベージュ色の紙面に白黒の挿絵で、最後の方で濃い桃色が少しだけ色塗られています。この静かな絵から、親しい大切な小鳥を亡くしたクマの気持ちがまっすぐに伝わってきます。

2025/05/04

「ことり」赤ちゃんから楽しめる絵本

小鳥が1羽やって来て、
また1、2羽やって来て、
少しずつ増えて10羽になります。
おや?10羽集まった形が素敵な姿に!
そこに猫がやって来て・・・。

中川ひろたか 文、平田利之 絵
金の星社
絶版になりました


レトロな雰囲気のグラフィックで、鮮やかな黄色の背景に、小鳥の青、猫の黒のコントラストが映えます。絵本を読み進めると、終わりの方で鳥たちが羽ばたいて行き、パッと真っ白な背景に変わります。18cm四方の絵本を開くと繰り広げられるこの色彩は、0歳の赤ちゃんにも刺激的で興味深く映ることと思います。
少しずつ集まってくる10羽の小鳥たちを楽しく数えたり、鳥たちが寄り添いあい、どんどんと素敵な形を形作っていくのも楽しめます。単純な青いシルエットに、黒い点(目玉)と線(口ばし)を描くだけで鳥に見えてしまう面白みも発見できます。猫がやって来た時の鳥たちの反応も楽しいです。
小さくてシンプルな絵本ですが、楽しみどころが満載です。かわいくて、感性に働きかける魅力的な絵本だと思います。赤ちゃんへのプレゼントにもおすすめです。

2025/05/02

「きょうはなんのひ?」

まみこはお母さんに、階段に置いてある手紙を見るようにと伝え、 
学校へ行ってしまいました。 
その手紙には次の手紙のありかが書いてあり、
次の手紙には、さらに次の手紙のありかが書いてあり・・・。
お母さんは家中を探し回り、手紙を集めました。
それは、まみこから両親への素敵な贈り物でした。
そしてまみこにも、素敵な贈り物が待っているのです。

瀬田貞二 作、林明子 絵
福音館書店


絵本のストーリーは表紙からすでに始まっており、裏表紙まで続きます。
私は子どもの頃、この絵本の綿密なストーリーに心を奪われ、優しい絵を隅々まで眺め、繰り返し読みました。そして何度も「まみこ」の手紙のような遊びをして楽しみました。この絵本のように何かを祝うため・・・ではなく、子供同士で宝探しのように遊びました。空想の世界を楽しませてくれるファンタジックな絵本とは異なり、『きょうはなんのひ?』からは具体的な遊びに発展し、ともに遊びを共有した人がいることが嬉しいですね。工夫して手紙を隠したりプレゼントを考えたり、探す立場になるのも楽しかったものです。しかし、「まみこ」のように知恵を凝らした上出来な手紙とプレゼントには到底かないませんでした。「まみこ」には本当に感心します。また、優しい人柄が伝わってくる「お母さん」にはいつまでも憧れます。
造形や絵画など、創作を子供に教える先生は、子どもが真似できないレベルの手本を作ってみせるのだそうです。『きょうはなんのひ?』は、いつまでも手本であり続ける絵本だと思います。

下の挿絵の中で「お母さん」が開いている絵本は、『きょうはなんのひ?』の作者、瀬田貞二さんが訳された『マドレーヌといぬ』です。犬がマドレーヌを助けようとする場面のページを開いています。