シェル・シルヴァスタイン (著)、村上 春樹 (訳)
あすなろ書房
「おおきな木」には何かメッセージが秘められているように思えます。しかし、一度読んだだけでは気づきにくく、長年寝かせておいて再読するとその感動を味わえる作品かもしれません。たとえ寝かせておいて忘れてしまっても心配はいりません。ロングセラーの名作ゆえまた出会う時が来ると思うのです。再会する度に気が向いたら読んでみると、前回読んだ時とは別の感動に驚くかもしれません。
おおきな木と少年にどこまで共感できるか。彼らに、自分の知る誰かの姿が重なるか。こうした気持ちは読む時期や人生の状況によって変化していきます。幼少期に読んだ時、親になって読んだ時、子供が巣立った後に読んだ時 ―― 時を経て読んでは新たな余韻が生まれ、読後感が変化していく類まれな作品だと思います。
この本の簡潔な文章と絵の中には、人間の人生の断片が詰まっています。それゆえ、所々で読み手の経験と交差するのでしょう。「おおきな木」のように、ささやかでも確かな何かを築きたいと思う大人にとって、本棚に残しておきたくなる一冊ではないでしょうか。
原書: The Giving Tree
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