2025/07/08

「こぐまくんのハーモニカ」

こぐまくんの母さんはお話を書く人、父さんはハーモニカの演奏家。
夜は父さんのハーモニカが子守唄になり、
母さんがお話をして寝かせてくれます。
こぐまくんは父さんからハーモニカをもらい、
どんどん上手くなってたくさんの人に褒められます。
ところが「こぐまくん」の心には迷いが生じ、吹くのをやめてしまいます。

 
ジョン・セバスチャン 作、ガース・ウィリアムズ 絵
三木卓 訳
リブリオ出版
絶版になりました


包み込む優しさに満ち、経験に基づく示唆に富んだ物語です。
人と比べられることにマイナスの気持ちを抱く人は多いものです。しかし、得意なことや優れているプラスの面を知るにも、周囲と比べて見定めているものです。比較した結果をどう受け止めるかによって、気持ちの持ち方に明暗が分かれます。
「こぐまくん」はハーモニカが上手いことを褒められますが、次第に好意的に受け止められなくなっていき、ハーモニカを吹くのをやめてしまいます。それは、プロのハーモニカ奏者であるお父さんのようになれるかもしれないよ、という賞賛のためでした。「どうしてみんなは、お父さんと比べたがるんだろう」という「こぐまくん」に、お母さんはわかりやすく答えます。そして、「大人になったらきっと父さんみたいになるって、みんなが言う。・・・父さんはそうなって欲しい?」という「こぐまくん」の問いに、お父さんは温かい言葉で「こぐまくん」を包んで満たします。お母さんもお父さんも、「こぐまくん」の戸惑う心を受け止め、自分の気持ちをまっすぐに伝えています。見習いたいと思いました! その言葉をぜひ絵本で確かめてみてください。(残念ながら、日本語版も原書も絶版状態ですが。)
挿絵はガース・ウィリアムズによるもので、白黒の繊細な線画で愛らしい「こぐまくん」の心の揺れを巧みに描いています。
この絵本の作者ジョン・セバスチャンは、アメリカのバンド、ラヴィン・スプーンフルを結成し、ハーモニカ奏者としても知られているそうです。「こぐまくん」のお顔に似ていますね。

日本語版も原書も絶版状態です。

原書: J.B.'s Harmonica
Written by John Sebastian / Illustrated by Garth Williams
Published by Harcourt Children's Books, 1993

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