6人の人魚のお姫様の中で一番美しい末のお姫様は、
海の上に行くことを許される15歳になった時、
船の上にいる人間の王子様に一目で恋をする。
人魚姫は、王子様と同じ人間になるために固い決心する。
H・C・アンデルセン 原作、リスベート・ツヴェルガー 絵、角野 栄子 訳
小学館
人魚姫は王子様と同じ人間になろうと決意しますが、人間になるためには、人魚の家族に別れを告げ、声を失い、さらには美しい尾が2本の脚になるのと引き換えに、脚には始終激しい痛みを伴うのでした。そこまでして人間になる望みを叶えた人魚姫。しかし、人魚姫は王子様のそばにいられるにもかかわらず、結ばれない運命なのでした。王子様の幸せを思いつつ、人魚姫は海の水の泡となってしまうのです。
ハッピーエンドにならないやりきれなさが切ないです。私は幼い時に人魚姫の話を読んでもらった時から、切ない人魚姫が心に引っかかって離れず、何より人魚姫が水の泡になってしまうという結末は強烈な印象を残し、恐れと悲しみの入り混じった想像で膨らみました。ところが私が幼い時に読んだ絵本とは違い、この絵本「人魚ひめ」のツヴェルガー氏の絵は、神秘と優しさ切なさを上品に描いています。「水の泡」の絵は無く、「水の泡」と化した後の次元の人魚姫を思わせる、温かさにつつまれた絵になっているのが救われます。また、私がこの絵本の挿絵で最も好きなのは、人魚姫が金色のうろこ模様がきらめくドレスを着ている場面です。この姿の美しいことといったら!
大人になって改めて「人魚ひめ」を読み、爽快なハッピーエンドの物語では感じることのできない、浮き沈みが錯綜する物語に心を動かされました。絵のもたらす感動も大いに味わえます。
すべての漢字にはふりがなが振ってあります。
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