2024/12/24

「クリスマス」バーバラ・クーニーによるクリスマス解説書

クリスマスとは何かをわかりやすく教えてくれる本です。
クリスマスを心待ちにする人々の様子に始まり、聖書で伝えられている話を掘り下げ、更にさかのぼって解説されています。
    
バーバラ・クーニー作、安藤紀子 訳
長崎出版 
 
クリスマスについて解説した絵本です。イエス・キリスト誕生の物語が語られていることはもちろん、世界中のクリスマスの祝い方や祝う時期に触れ、そもそもイエス誕生の前から、各地で12月に太陽と火を崇拝する祭りをしていたことも述べられています。やがて、12月に行われていた祝いの慣習と時期を合わせてイエスの誕生も祝うようになったということです。また、クリスマス・イヴに行うキャンドル・サービスは、太陽と火の崇拝の名残りなのだそうです。さらに、サンタクロースやクリスマス・ツリーについても言及し、その起源を知ることができます。 他にも、イエス誕生の話についての聖書に書かれていない逸話も解説しています。
黒、赤、緑の色使いの端正で上品な絵がとても美しく、清らかな印象です。
すべての漢字にふりがな付きです。
小学生以上の、クリスマスについて知りたい方々におすすめです。

2024/12/22

「天使のクリスマス」サンタクロースが来る秘密

クリスマス・イヴの夜、 プレゼントして欲しいものを手紙に書き、
両親とおやすみのキスをして眠りにつく少女。
少女のもとへ、サンタクロースがプレゼントを持ってやって来ます。
ところで、 サンタクロースはどうやって煙突のない戸締りをした家に入るのでしょう?
どうして気付かれずに訪れるのでしょう?
この絵本は、不思議なサンタクロースの訪問の秘密を教えてくれます。
きっと謎が解けますよ。 
  
ピーター・コリントン 作・絵
ほるぷ出版 1990年11月


サンタクロースがどうやって我が家にやってくるのか、その不思議な秘密を知りたい子どもたちにとってもおすすめです! この絵本には、「この本を、えんとつのない家にすむ 子どもたちに贈ります。」と記されています。ピーター・コリントンの夢いっぱいの想像力で描かれた、素敵でちょっとお茶目な、気持ちがすうっと浄化されるような物語です。繊細なタッチの清らかで優しい気持ちにさせられる絵はコマ割りされており、言葉が添えられていません。絵だけで、静かでとてもドラマチックなひと時を楽しませてくれます。

2024/12/20

「サンタクロースと小人たち」サンタクロースの仕事が良くわかる

フィンランドの北の外れにある不思議な村。
そこには、サンタクロースが小人たちやトナカイに囲まれて暮らしています。
彼らはどのような暮らしをしているのでしょう。
クリスマスのためにどんな準備をしているのでしょう。
そして、クリスマス・イヴにはどんな仕事をするのでしょう。
サンタクロースたちの1年がよくわかりますよ。
   
マウリ・クンナス 作、 稲垣 美晴 訳
偕成社 



イヴの夜、サンタクロースが世界中の子どもたちに望み通りのプレゼントを配ることのできる秘密を、子どもたちに教えてくれる絵本です。楽しくて幸せな気分になります。彼らのクリスマス・イヴの仕事は、世界中を飛び回って子どもたちに的確なプレゼントを贈ること。たいへんな大仕事ですが、そのための準備も、それはそれはたいへんなのです。彼らがどんな毎日を送っているのかを、ユーモラスに、なるほどと頷けるように詳しく描いています。サンタクロースたちの仕事ぶりを知った子どもたちは、きっとサンタクロースからのクリスマス・プレゼントを大切にすることでしょう! 
文章量は多めで読みごたえがあり、絵もたっぷりと細かく描かれて見ごたえがあります。遊び心たっぷりの絵で楽しいですよ。
漢字にはふりがな付きですが、同じページで2度以上掲載の漢字にはふりがな無しです。

2024/12/18

ティム・バートン 「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」

ハロウィーンランドに住むジャックは背高のっぽのおやせさん。
ジャックはハロウィーンランドでの毎日に飽き飽きしていた。
「墓場暮らしはもう嫌だ、もっと素敵な人生があるはずだ」
さまよい歩き続けたジャックは森の奥深くで不思議な扉を見つけた。
その扉は素敵なクリスマスタウンに通じていた。
ジャックは喜びと笑いを届けるクリスマスタウンの人々に嫉妬し、
今年のクリスマスは自分がサンタになって人々に喜びを届けることに。
しかしジャックは、闇の世界から持ってきたプレゼントをまき散らしてしまう。

ティム・バートン 作、永田 ミミ子 訳
ビリケン出版
絶版になりました

人を怖がらせる毎日がもう嫌になったジャックは、切望して(にせものの)サンタになったのに、結局ジャックが張り切って届けたのは不気味な振る舞いと恐ろしいプレゼント。イヴの夜、ご機嫌で喜びいっぱいなのはジャックだけでした。
何をやっても怖いジャックだから、逆に愛されるキャラクターなのに違いありません!チャーミングで憎めない姿のジャックを生み出したティム・バートン氏に感謝! 
すべての漢字にはふりがなが振ってあります。

アニメ映画の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」をもとにして、あとからこの絵本が作られたようです。

2024/12/16

「くるみわりにんぎょう」

クリスマスの夜、マリーとフリッツは、 マイエルおじさんから「くるみ割り人形」をもらいました。 この人形の口にくるみを入れると、くるみを上手く割ってくれるのです。 しかし、すぐにフリッツは「くるみ割り人形」のあごを壊してしまいました。 マリーは人形のあごにリボンで手当てをしてあげました。 その夜、くるみ割り人形は、マリーをファンタジックな世界へと招待しました。
   
ホフマン 作、山主 敏子 文、 堀内 誠一 絵
偕成社


マリーがくるみ割り人形に導かれて行った世界には幻想的な風景やキャラクターが次々に登場し、マリーを楽しませてくれます。きれいな色を散りばめた堀内誠一さんの絵がかわいらしいです。マリーの優しさがにじみ出ているような素敵な絵です。滑稽なくるみ割り人形も、欲しくなるくらい愛嬌たっぷりのキャラです!
訳者のあとがきによると、バレエ音楽で有名な「くるみ割り人形」を書いたホフマンは、この物語に親友の子どもたちであるフリッツとマリーを登場させ、自らもマイエルおじさんとして登場させているのだそうです。
すべてひらがなとカタカナで書かれています。
読みやすい文章で、就学前のお子様にもわかりやすい物語に仕立ててあります。

2024/12/14

「きつねとうさぎ」無敵のキツネに立ち向かうオンドリが見もの

キツネの家はピカピカの氷の家。
ウサギの家は木の皮の家。
春になりキツネの氷の家が溶けると、キツネはウサギから木の皮の家を取り上げ、 住み着いてしまいました。
家を追い出されたウサギに出会った動物たちは、
キツネを木の皮の家から追い出しに行きますが・・・

「きつねとうさぎ」 世界傑作絵本シリーズ
フランチェスカ・ヤールブソワ 絵
ユーリー・ノルシュテイン 構成
児島宏子 訳
福音館書店

ロシアの昔話だそうです。 ロシアの民族情緒あふれる洒落た作風です。登場する動物たちはとぼけた表情をしたぬいぐるみのように描かれ、人形芝居のようにコミカルな印象です。大きくて力の強いオオカミ、クマ、ウシが太刀打ちできなかったキツネに、オンドリが勇ましさとアイデアで立ち向かうのが見ものです。繰り返しのセリフと意外な展開が面白いです。 
漢字は「木」だけ使用されており、振り仮名付きです。カタカナは少しだけ出てきます。小学1、2年生の音読にもちょうどよいと思います。読み聞かせは2~4歳から楽しめると思います。

2024/12/12

「3びきのくま」ロシア民話をロシアの雰囲気で楽しむ

森へ遊びに行って道に迷った女の子は、 小さな家をみつけて入りました。 実は、この家は3匹のクマの家族が住む家。 クマたちは散歩に出かけていて留守だったのです。 女の子はテーブルの上にあった3匹分のスープを一口ずつ飲み、 3つの椅子の一つずつに腰を掛け、 3つのベッドの一つずつに入り、 一番小さなベッドで眠ってしまいました。 そこに、お腹をすかせたクマの家族が帰ってきました。

   
トルストイ 作、バスネツォフ 絵、おがさわら とよき 訳
福音館書店 1962年5月発行
    

いくつも出版されている人気ロシア民話の「3びきのくま」。中でも私のいちおしの絵本がクラシックでロシアの雰囲気が素敵なこの作品です。 クマの家族構成は、とても大きなお父さんクマのミハイル・イワノヴィッチ、少し体の小さいお母さんクマのナスターシャ・ペトローブナ、小さなクマの子のミシュートカの3匹。名前が付いているのでクマの存在感が高まり、尊厳まで感じられる気がしてきます。それでいて、とぼけた表情のクマ、という挿絵がなんだか魅力的です。
それから、「誰だ、私のスープを飲んだのは」「誰です、私のスープを飲んだのは」「誰だい、ぼくのスープをのんでしまったのは」という3匹の同じような言葉の繰り返しが楽しく読めます。繰り返しとはいえ、状況によって少しずつ言葉が変わるので飽きません。そして話が盛り上がってすぐに物語が終結するのも潔くって面白いです。 
すべてひらがなとカタカナで書いてあります。

 次回も、「わしの椅子に座っとったやつは誰だ?」「わしのパンを食べとったやつは誰だ?」というような繰り返しのセリフの出てくる絵本について書こうと思います。

2024/12/10

「リサとガスパール デパートのいちにち」

リサとガスパールは、おばさんが働くデパートでのクリスマス・ショーを見に行く。
デパートに着いておばさんが目を離している間に、
リサとガスパールはおもちゃ売り場に来てしまう。
売り場は休館日なので他に誰もいない。
「ちょっとだけなら・・・・いいよね」
リサとガスパールは大はしゃぎ。
アン・グッドマン 作、ゲオルグ・ハレンスレーベン 絵
石津ちひろ 訳
ブロンズ新社
「リサとガスパール」 シリーズは2021年9月に販売終了

デパートのひと気のない場所で好き放題に遊んでしまったリサとガスパールは、おばさんのお叱りを受けます。けれども、嬉しいことにおばさんは二人のした事をおおらかに受け入れてくれます。そしてクリスマスショーへ。リサとガスパールには忘れられないデパートでの一日になったことでしょう。子供のやんちゃな心を開放してくれる展開が楽しく、優しいおばさんにほっとします。そしてかわいらしく色とりどりの絵が素敵です。ここで描かれている舞台はパリのデパート、ギャラリー・ラファイエットで、クリスマスシーズンには豪華なイルミネーションで装飾されることで有名です。その姿を絵本の中で楽しめます。光が美しく印象的に描かれているので注目です。
アンとゲオルグ夫妻がリサとガスパールを世に送り出したのは1999年。優しく親しみやすい物語と絵には癒されます。ゲオルグ・ハンスレーベン氏の絵は色彩や影の描写の楽しい参考書にもなります。リサとガスパールの原画展を見に行った時に知りましたが、ハンスレーベン氏がキャンバスに向かう時はいつも真摯に立って筆を執るのだそうです。そして、キャラクターの姿かたちを決定する時は無数のスケッチをして決めるそうですが、リサとガスパールのしっぽは、キャラクターが生み出された当初はとても長かったそうですよ。原画展でその絵を見たら、カンガルーのしっぽのように床まで垂れていました。

2024/12/08

急行「北極号」

サンタクロースを一目見ようとイヴの夜を寝ずに過ごす少年は、 
急行北極号に乗り込みサンタのいる北極点に向かう。 
そこで少年はサンタからソリの鈴をもらう。
その美しい鈴の音はサンタを信じる者にしか聞こえないのだという。
少年が大人になった今も、彼にはその鈴の音が聞こえる。

 クリス・ヴァン・オールズバーグ 作、村上春樹 訳
あすなろ書房
コルデコット賞受賞

美しく描かれたこの本をめくる時は、うっとりしてしまうので瞑想に似た時間を過ごすかのようです。 心にゆとりを持ちたい時に手に取りたい本です。
サンタクロースを信じている子どもには複雑な話かもしれません。というのも、サンタを信じる者にしか聞こえない鈴の音は少年には聞こえるが、少年の友人はサンタなどいないと言い、鈴の音は両親には聞こえず、やがては妹も聞こえなくなってしまうという現実的なことも書いてあるためです。サンタを信じる心を持っていた大人のための本なのかもしれません。とは言えやはり、サンタはいるよという物語です。
映画「ポーラー・エクスプレス」の原作本です。原作本を読み、映画を楽しむ。こういうの大好きです。

トム・ハンクス (出演)、 ロバート・ゼメキス (監督)

2024/12/06

「オーケストラの105人」「105にんのすてきなしごと」

一糸乱れぬ美しいハーモニーを奏でるオーケストラ。 
オーケストラの一人ひとりの舞台裏を、
いえ、舞台裏に入るもっと前から、
身支度を整えるところから、
こっそり見せてくれるとっておきの絵本です。 

カーラ・カスキン作、マーク・サイモント絵、なかがわちひろ訳
あすなろ書房

 初めて読んだ時に一目ぼれした絵本です。大人でも子どもでも、音楽が大好きな方、とりわけクラシック好きな方にはお気に入りの絵本になるかもしれません! 
緊張感と高揚感が交差するクラシックコンサート。観客もおしゃれをして背筋を伸ばして鑑賞します。シックで上品なオーケストラの皆さんが一つになって奏でる演奏は、観客を包み込んで特別なひと時をもたらしてくれます。
そんなちょっと遠い存在感のあるオーケストラの皆さんを別の視点からも眺めてみると、一人ひとりが実に様々で個性や人間味にあふれる暮らしなんだ!と親しみが沸く、ユニークでしゃれた絵本です。

原作が1982年にアメリカで出版された当時、現地では児童書の推薦本としてこぞって選定されたようです。日本語版は以前は、すえもりブックスから「オーケストラの105人」という題名で出版されていましたが絶版になり、その後あすなろ書房から「105にんのすてきなしごと」という題名で出版されています。

Karla Kuskin 作, Marc Simont 絵, HarperCollins 1982  

カーラ・カスキン 作、マーク・サイモント 絵、岩谷時子 訳
すえもりブックス(絶版になりました)

2024/12/04

「しょうがパンぼうや」

おばあさんがしょうがパン(ジンジャーブレッド)を焼き上げると、 
しょうがパンぼうやとなって走って逃げ出してしまいました。 
おばあさんはおじいさんと一緒に追いかけます。
しょうがパンぼうやに出会った人や動物たちも追いかけます。
そしてついに・・・・。
 
 ポール・ガルドン 作、多田裕美 訳
ほるぷ出版 

このいたずらな目つきの表情で駆け抜ける「しょうがパンぼうや」の姿が愉快でたまりません。人の形をしたクッキーの型で焼くジンジャーブレッドマン。欧米ではクリスマスの頃に焼くのだそうです。そしてジンジャーブレッドマンの楽しい昔話も、みんなが大好きな話なのだそうです。私も、大好きなポール・ガルドンが描く「しょうがパンぼうや」がとても気に入っています。
この話とそっくりなロシア民話「おだんごぱん」も人気で面白いのですが、クリスマス近くになったら「しょうがパンぼうや」を読んで、親子でジンジャーブレッドマンを焼いてみるのも楽しいですね。
「おだんごぱん」ロシアの昔話  日本傑作絵本シリーズ
せたていじ 作、わきたかず 絵
福音館書店

2024/12/02

「ターシャ・テューダーのアドベントカレンダー」

ターシャ・テューダー 著、内藤里永子 訳
メディアファクトリー 出版
絶版になりました

アドヴェント・カレンダー(Advent Calendar)とは、12月1日からクリスマスまでの毎日をカウントするカレンダーです。人気絵本作家ターシャ・テューダーは手作りのアドベントカレンダーを飾ってクリスマスを迎えていたそうです。この絵本は、彼女のその素敵な慣わしをおすそ分けしてくれます。
見開き8ページに描かれた絵の所々にぺりっとめくれる扉が24か所あり、扉には番号が付いていて、めくると絵が隠れています。12月になったら毎日番号順に一つずつめくり、クリスマスまでのカウントダウンをすることができます。毎年12月に飾って繰り返し楽しめます。見開き8ページだけの薄い絵本で、飛び出す絵本のような派手な仕掛けではなく小さな扉が仕込まれただけの簡素な絵本です。

 《アドベントカレンダーについて》
アドベント・カレンダーには様々なものがあり、この絵本のようにイラストに隠し扉の付いたものの他、24~25個の引き出しが付いた箱型や、カレンダーの日付けごとにポケットが付いたウォールポケット型、他にもミトンや靴下の形の袋をずらっと並べてつるしたものなどがあります。一つ一つの入れ物にラッピングしたお菓子や小さなプレゼントを入れておき、毎日中身を取り出して楽しめるようになっています。準備する方も開けて楽しむ方も、なんと心浮き立つイベントでしょう。