箱舟には、地上のひとつがいの生きもの達とノアの家族が乗り込んだ。
鳩は平和の象徴ですが、画家のピカソが描いた鳩の絵が平和の象徴の始まりだったそうです。ピカソは他にもオリーブの葉をくわえた鳩の絵を好んで描き続けています。タバコのピースのパッケージにもオリーブをくわえた鳩がデザインされています。このような有名な作品に限らず、鳩とオリーブの葉はよく見かけるモチーフです。また、この絵本は空に虹がかかるまでの物語で、虹に重要な意味があります。虹もよく見かけるモチーフですが、聖書に由来する意味も込めて描かれているかもしれませんね。
日本人は聖書になじみがないのが多数派である一方、世界では聖書に書かれていることが頻繁に引き合いに出され、物語や映画でも聖書を知らないとピンと来ない場面が多々あります。聖書に書かれていることは膨大ですが、無宗教であってもノアの箱舟は少なくとも知っておくべき基礎知識だと思います。
アーサー・ガイサート 作、小塩 節・小塩 トシ子 訳
こぐま社
絶版になりました
――― 地上が水で覆われた後、再び地上に住めるようになって箱舟から出ると、空に虹がかかった。――― ここまでの様子が描かれています。
ノアの箱舟について知るには、この絵本が最もおすすめです。作者のアーサー・ガイサートは銅版画家だそうです。羊皮紙のようなクリーム色の下地に、緻密な黒い線で表現された絵が神聖な印象で美しいです。ノアが箱舟を造るに至った経緯に加え、表紙が発するメッセージの通り、特に箱舟の中での暮らしの想像図が細部まで描かれています。ノアたちが着々と箱舟を造る様子、ひとつがいの生きもの達が次々にやってくる様子、一片の雲が現れ、次第に集まって雨雲になっていく様子。これらの様子が同時進行で描かれていきます。そして地上が水で覆われてからは、ノアとその家族は生きもの達の世話に追われます。
私が一番好きな場面は、地上の水が引いた後にノアが1羽の鳩を放ち、その鳩がオリーブの枝をくわえて戻って来たことで、再び地上に住めるようになったことを知る、という場面です。
文章は簡潔で、すべての漢字にふりがなが付いています。
残念ながらただいま日本語版も原書も絶版状態のようです。
次回はこの続編『洪水のあとで ―ノアたちのその後―』について書きます。
原書:
The Ark
by Arthur Geisert. Houghton Mifflin Harcourt, 1988.

0 件のコメント:
コメントを投稿