2025/09/30

「かいじゅうたちのいるところ」

いたずらしてお母さんに叱られたマックスは
寝室に押しやられます。
するとマックスのいる部屋には木々が生い茂り、
森のような別世界に。
そしてマックスは旅に出ます。 
たどり着いたところは、怪獣たちのいるところ。

「かいじゅうたちのいるところ」
モーリス・センダック 作、神宮 輝夫 訳
冨山房 1975
コルデコット賞受賞

マックスの想像の世界は、世界中の子どもたちが描く空想や願望ときっと似ているのだと思います。勇敢で人気者でみんなを動かせるマックスの物語は憧れなのではないでしょうか。最後にマックスが我に返る描写が私はたまらなく好きです。その最後の描写を初めて読んだ時、すっかり心を掴まれました!
この実写版の映画が、日本では2010年1月に公開されています。

「かいじゅうたちのいるところ」
アマゾン Prime Video

2025/09/28

いつも独りで退屈な日々を送っていた貝の子、プチキューが、
まだ見たことがない美しいものを見たくて、
広い海の世界へと冒険に旅立ちます。
プチキューがついに見つけたものは・・・。

「貝の子プチキュー」
茨木のり子 作、山内ふじ江 絵
福音館書店 2006
絶版になりました

詩人、茨木のり子さんの絵本です。
寂しく退屈な毎日から抜け出す方法に気付いたプチキューが見た、うっとりする海の景色を一緒に味わえます。決して悔やまぬように自分の思いを一途に貫くプチキューと、柔らかく静かな波のごとく一つ一つ心に響く言葉は長い余韻を残します。「貝の子プチキュー」はなかなか一言では言い表せない物語で、読み手によって解釈が様々なのではないでしょうか。幼い子どもからは「かわいそう」と言う声が聞こえてくる絵本です。10歳くらいになれば、少しずつ心に訴えかけてくるものが出てくるかなと思います。

2025/09/26

「ももたろう」桃太郎絵本の傑作

「ももたろう」日本傑作絵本シリーズ
松居直 文、赤羽末吉 画
福音館書店 1965
全国学校図書館協議会選定「基本図書」
全国学校図書館協議会第14回推薦
厚生省中央児童福祉審議会特別推薦
第12回サンケイ児童出版文化賞受賞
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

昔話の語り言葉の面白さ、リズムの良さが堪能できる、声に出して読み聞かせるのが楽しい昔話です。桃太郎誕生の背景や征伐への旅立ちがじっくりと描かれており、読みごたえがあります。おじいさんとおばあさんが大切に育てた桃太郎を鬼退治に送り出す姿と、無事に帰って来た桃太郎を喜んで迎える姿に、親としては気持ちが重なります。自信に満ちた桃太郎のたくましい姿は頼もしく、鬼が島へと向かう場面は高揚感と見ごたえがあります。 それから最後に、挿絵を描いた赤羽さんらしい仕込みがあります。

桃太郎伝説は何を例えているのか。簡単に言えば、桃太郎は大和朝廷を、鬼は製鉄技術を意味するとも言われています。世界は鉄を制したところから覇権を握ってきました。国を強く栄えさせる製鉄技術を確保するために、「桃太郎」こと大和朝廷は大義名分を打ち立てて「鬼退治」に行き、「鬼」すなわち製鉄技術を手中に収めたのです。鬼と言えば金棒を持っているイメージがありますが、金棒は彼らの製鉄技術の象徴なのです。この「ももたろう」の絵本にも金棒を持った鬼たちが登場します。そして面白いことに、鬼退治を終えて帰る舟には、桃太郎たちと一緒に赤鬼と青鬼も乗っているのです。これは何を意図しているのでしょうか? 製鉄技術者を連れて来たということでしょう。この仕込みがあるために、数ある桃太郎絵本の中でもこの作品が完璧だと思います。読み解き方はそれぞれですが、どう読み解くかの余韻が、かつて子どもだった読み手が大人になっても響く作品です。

数字は漢字で、他はすべてひらがなで書かれています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。

2025/09/24

「ちびくろさんぼのおはなし」

あるところに、ちびくろさんぼ という男の子がいました。
お母さんは くろまんぼ、
お父さんは くろじゃんぼ といいました。

「ちびくろさんぼのおはなし」
ヘレン・バナーマン 作・絵、灘本 昌久 訳
径書房 1999
絶版になりました


日本で「ちびくろさんぼ」として知られている本の元をたどると、1899年にイギリスで初版が発行された小さな本が始まりだそうです。それから100周年になる1999年に、日本では初版に基づいたこの絵本「ちびくろさんぼのおはなし」が発行されました。黄色いカバーを外すと表紙は初版と同じデザインで、タイトルも原題である "The Story of Little Black Sambo" と書いてあり、中身は日本語ですが挿絵は作者が描いたもののままだそうです。「ちびくろさんぼ」という名前は、他に替えようのない、ぴったりで愛嬌ある名前ですね。 この「ちびくろさんぼのおはなし」は手のひらサイズの小さな小さな絵本なので、本棚の中で迷子にならないよう気を付けなくてはならないほどです。この小さな絵本に収められている物語には、愛情と知恵、勇気と喜びが満ちていてたっぷりと楽しめ、物語の存在感の大きさと面白さには驚かされます。そして何と言っても、作者自身が描いた絵が魅力です。けっして上手くはないかもしれませんが、物語の面白さを絵が更に補い、「ちびくろさんぼ」の世界を創り出した時の伝えたい気持ちが詰まっているように思えます。特にトラたちが走り続けて溶けてバターになり、そのバターを使って焼いたホットケーキの絵がたまりません。「黄色と茶色に焼けたホットケーキはまるで小さなトラのようでした。」というホットケーキの絵に感心させられるのは、絵のウマヘタさ加減がなせる業(失礼)かもしれません。ぜひ、作者の挿絵をご覧あれ。

原書:
The Story of Little Black Sambo by Helen Bannerman,
Published by Grant Richards, 1899.

2025/09/22

「ちびくろ・さんぼ」

ちびくろ・さんぼは散歩の途中にトラに出合い、
命と引き換えにきれいな赤い上着を差し出します。
次に出会ったトラにはきれいな青いズボンを、
その次に出会ったトラにはきれいな紫色の靴を、
最後に出会ったトラには緑色の傘を差し出しました。
4匹のトラはちびくろ・さんぼからもらった品を身にまとい、
我こそがジャングルで最も立派なトラだと思うのですが ――。

「ちびくろ・さんぼ」
ヘレン・バンナーマン 作、フランク・ドビアス 絵
光吉夏弥 訳
瑞雲舎 2005
まずは、ちびくろ・さんぼとトラたちとのやり取りが滑稽で楽しいです。それから、4匹のトラが喧嘩になり、1本の木の周りをぐるぐる回っている内にとろけるバターになってしまう名場面と、さんぼの家族がそのバターを使って作ったホットケーキをたっぷり食べる満足感。最後まで面白さが満載です。ちびくろ・さんぼとお父さんお母さんは、鮮やかでカラフルな色が似合っておしゃれですね! 
なお、そのバターはインドのギ―というバターで、近頃は日本でも売られているのを見ますね。
次回は作者のヘレン・バンナーマン自身が挿絵を描いた初版本をもとに出版された「ちびくろさんぼのおはなし」について書きます。

2025/09/20

「ライオンとネズミ」

ネズミはライオンの足の間を歩いてしまいましたが、
ライオンは逃がしてやりました。
いつか恩返しをするとお礼を言う小さなネズミを、
ライオンはあざわらいます。
ところが、ある日ライオンは罠にかかって抜け出せなくなり、
ネズミに助け出されるのでした。

 
「ライオンとネズミ」
ラ・フォンテーヌ 文、ブライアン・ワイルドスミス 絵
渡辺茂男 訳
らくだ出版 1982
ケイト・グリーナウェイ賞受賞
日本図書館協会選定
全国学校図書館協議会選定
厚生省中央児童福祉審議会推薦
絶版になりました

イギリス人画家ブライアン・ワイルドスミスが描いたジャン・ド・ラ・フォンテーヌ寓話です。輝かんばかりの鮮やかな色彩で楽しめます。登場する動物たちは、豊かな色彩にくわえて大胆なレイアウトで迫力があり美しいです。イソップ寓話の「ライオンとネズミ」と同じような内容です。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。
小学校1、2年生の音読の学習にもちょうど良いです。

2025/09/18

「ねずみのよめいり」

きれいで気立てがよく育った大事な娘を、
父さんネズミは、世界中で一番偉いものに嫁にやろうと思いました。
母さんネズミは、世界中を照らすお日さまが一番偉いと考えました。
さっそく、父さんネズミはお日さまに頼み込みに行きました。

「ねずみのよめいり」
小澤俊夫 再話、金井田英津子 絵
くもん出版 2007

定番の昔話が、ロマンチックで温かい素敵な絵本に!「ねずみのよめいり」の絵本はこれが一押しです。
父さんネズミと母さんネズミが娘を大事に思う様子が、温かい雰囲気に包まれて描かれています。嫁ぎ先を求め、まずは太陽のもとへ、次に雲のもとへ、と転々と頼みに行く父さんネズミはとても丁寧で、「一番偉いものに嫁にもらって欲しい」という大胆な頼みをしているのに好感が持てます。柔らかく優しい細やかな絵の中で、光と影の明暗が美しく印象的です。版画を所々用いているところも面白いです。

用いられている漢字は、大、家、子、生、父、母、日、空、雲、風で、ふりがな付きです。文字は大きく、文章は読みやすく美しいです。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。

2025/09/16

「まっくろネリノ」

ぼくの名前はネリノ。
兄さんたちはきれいな色をしているのに、ぼくは真っ黒。
だから兄さんたちはぼくと遊んでくれない。
ある日、きれいな色の兄さんたちは、捕まえられて金の鳥かごの中に。
ぼくは知恵を絞って、兄さんたちを助け出そうと考えた。

「まっくろネリノ」
ヘルガ・ガルラー 作、矢川澄子 訳
偕成社 1973

仲間はずれのネリノは兄さんたちを助け出すために大活躍をし、それからは兄弟みんなが仲良しになる話です。救出に役立ったのは、ネリノが気にしていた黒いからだの色でした。兄さんたちに受け入れてもらったネリノの嬉しい気持ちって、多かれ少なかれ、子どもも大人も日常よく体験している気持ちなのではないでしょうか。読むとホッとして、こちらも嬉しくなります。
ところで、毛糸玉のようにコロコロと丸いネリノたちは、可愛らしくてユニークな姿が面白いです。こんなキャラクターに出会えることも「まっくろネリノ」の魅力だと思います。創作の楽しさや面白さも見せてくれる素敵な絵本ですね。
文章も何だか可愛らしく、リズミカルで読みやすいです。

すべてひらがなで書かれています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりだと思います。

2025/09/14

「じごくのそうべえ」

軽業師のそうべえは綱渡りの最中に落下し、
あの世へ行ってしまいます。
そこで出会った歯科医、医者、山伏とともに地獄へ送られ、 
地獄で騒動を起こします。

「じごくのそうべえ」 桂米朝・上方落語・地獄八景より
田島征彦 作
童心社
第1回絵本にっぽん賞受賞

地獄に送られたそうべえたち4名は、それぞれの知識や特技を駆使して閻魔大王を困らせます。地獄での様々な仕打ちの切り抜け方や会話の様子が面白くって、笑わずにはいられません! 大胆な絵が、言葉の面白さをさらに強烈にしてくれます。そして舌を巻いた閻魔大王は、挙句の果てにそうべえたちを・・・。最後まで笑わせてくれます。三途の川や針の山、嘘をついたら舌を抜かれることなど、あの世について言われている事を子どもたちが知るきっかけにもなります。
上方落語は京都・大阪の落語なので、「じごくのそうべえ」は関西弁で書かれています。軽やかな言い回しが楽しいです。関西弁を話さない方にももちろん面白いはずです。

下の画像左側 :
浄玻璃の鏡(生前の善悪所業を映し出す鏡)の前に立つ閻魔大王 

2025/09/12

「にぎりめしごろごろ」

おじいさんがにぎりめしを食べようとすると、
にぎりめしはお地蔵様のところへ転がって行きました。
おじいさんは にぎりめしをお地蔵様に差し上げ、
お地蔵様のお告げに従ってお堂に隠れます。
すると、夜中にお堂の前に鬼たちが来て酒盛りを始めました。
おじいさんはお地蔵様から鬼たちの置き土産をもらい、家に帰ります。
それを知った欲張りでぶしつけな隣のおじいさんとおばあさんは、
真似をしてみるものの、哀れな結果となってしまいます。

「にぎりめしごろごろ」こどものとも傑作集
小林輝子 再話、赤羽末吉 画
福音館書店 1994

 

「むかし、あったけずおん。きこりの じさま、すんでいたっけと。」
このような語り口で書かれ、声に出してゆっくりのんびりと読みたくなる昔話です。横長の紙面に伸びやかに描かれた絵はわかりやすくて楽しく、登場するキャラクターの豊かな表情が話を面白くしてくれます。
小学1年生の教科書に採用された「おむすびころりん」と同じような話です。「おむすびころりん」では、おじいさんのおむすびがネズミの巣穴に転がり落ち、追いかけたおじいさんはネズミにもてなされます。おじいさんはお土産に小槌をもらい、小槌を振るたびにお米や小判が出てきて、おじいさんとおばあさんは幸せに暮らします。「おむすびころりん すっとんとん ころころころりん すっとんとん」と繰り返されるのが楽しく、かわいらしい話です。欲張りなおじいさんとおばあさんは出てきません。
欲張りじいさん、ばあさんに登場して欲しいならば、「にぎりめしごろごろ」を! 面白いですよ。

2025/09/10

「いのちのおはなし」

「生きているとは どういうことだと思いますか?」
「命は どこにあると思いますか?」
日野原先生が生徒たちに問いかけると、色々な意見が出てきます。
では、先生の答えは?
「いのちのおはなし」 
日野原重明 文、村上康成 絵
講談社 2007

高齢になっても医師をしておられた日野原先生が、「命」を大切にするとはどういうことなのかを教えてくれます。いかにも重いテーマとしてではなく、説教じみている訳でも、難しい話でもありません。この教えを受けると、自分の「命」のこれからを希望で埋め尽くして考えるようになると思います。日野原先生のこの教えから、もちろん大人も「命」について学べます。また、あとがきではもう一つの大切なこと、「心」とは何かについても書かれています。「命」も「心」も、これまでの私が抱いていた概念とは違うもので、シンプルで聡明な納得の解釈でした。ひと通り読んで、私の中で何かが変わるのがわかりました。親子でためになる、明るい絵本です。絵もかわいらしいです。

3、4年生に読める漢字にはふりがななしで、難しい漢字にはふりがな付きです。

2025/09/08

「アンジェリーナはバレリーナ」

ネズミのアンジェリーナはバレエに魅せられ、 寝ても覚めても踊りのまね事に夢中です。 お父さんとお母さんは、 アンジェリーナにバレエのレッスンをさせてあげることにしました。 熱心なアンジェリーナは、やがて世界中を魅了するバレリーナに! 

「アンジェリーナはバレリーナ」
キャサリン・ホラバード 文、ヘレン・クレイグ 絵
岡田好恵 訳
講談社 2003
絶版になりました


夢を叶えるアンジェリーナの物語です。アンジェリーナの成功には、絶え間ない努力や両親の理解、恩師の存在などがあることがさらりと描かれています。バレエは本人の努力はもちろん支える周囲の努力もたいへんですが、それを楽しい物語に仕立ててあるのがいいです! ひたむきで前向きなアンジェリーナの発するエネルギーが、きっと読み手に届きます。
軽やかでお洒落な絵もまた素敵です。絵を見るだけでも話の流れがわかるくらい描き込まれています。人柄や生活感がにじみ出ている絵の隅々まで目が離せません。アンジェリーナたちが愛らしく踊る姿は応援したくなります。仲むつまじい両親の姿もかわいいです。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。

イギリスの作品で、1983年に最初に出版されています。2003年に日本版が出版されたのち、WOWOWでアニメ版も放送されていました。DVDも出ていたようですね。アンジェリーナの作品はシリーズ化されており、イギリスではおなじみの人気作品のようです。
作者、Katharine Holabird の公式ホームページも素敵です。絵本のファンの方、バレエ好きなお子さんに嬉しい、ダウンロードして楽しめるサービスもあります。

アマゾン Kindle 版で、アメリカ版の中身を少し見られます。
アメリカ版: Angelina Ballerina
by Katharine Holabird (Story), by Helen Craig (Illustrations),
Little Simon, 2019.

2025/09/06

「きみはおおきくて ぼくはちいさい」

小さなゾウがひとりぼっちで暮らしていた。
ある日、ライオンの城の前で眠ったところ、
王様ライオンに城へ迎え入れられた。
それ以来、ふたりはいつも一緒に過ごすようになった。
小さなゾウにとって、ライオンは多くの事を知り、多くの物を持った、
大きな存在だった。
やがてゾウは成長し、心も体も大きくなった。
その姿に、ライオンは王である気分を持てなくなり、
ゾウは城を離れることを決めた。
年月が流れ、ゾウは王でなくなったライオンと再会する。
そのとき、ゾウにとってライオンは ――。

「きみはおおきくて ぼくはちいさい」
グレゴワール・ソロタレフ 作、武者小路 実昭 訳
にいるぶっくす 2004
絶版になりました

まだ幼くて小さかった頃のゾウが、心のよりどころにし、敬っていた王様ライオン。そのライオンよりもずっと大きなゾウに成長しても、ライオンが王位から転落しても、ゾウにとって、ライオンに対する立場も気持ちも変わりません。落ちぶれてしまったライオンを前に、大きなゾウは、幼く小さかった頃と変わらずにこう言います。「君(ライオン)は大きくて、ぼくは小さい。」 ゾウの相手を敬う謙虚で優しい気持ちが、ライオンを温かく迎え入れます。
ゾウの大きな心には感銘を受けます。とても良書だと思うのですが、残念ながら長らく絶版状態です。語りかけるような意味深い絵が、つややかなアクリル画で表現されている美しい絵本です。 

すべての漢字には振り仮名付きで、読みやすい文章です。 
同じ作者のこちらの作品は、とても考えさせられる深い物語です。
「もうぜったいうさちゃんってよばないで」
グレゴワール・ソロタレフ・作

2025/09/04

「もう ぜったい うさちゃんって よばないで」

ぼくの名前はジャン・ニンジンスキー。
けれども大人たちはぼくのことを「うさちゃん」と呼ぶ。
そんなのは嫌なのに、わかってくれない。
だからぼくは、「うさちゃん」なんて呼ばれない方法を考えた。

「もう ぜったい うさちゃんって よばないで」
グレゴアール・ソロタレフ 作、末松 氷海子 訳
リブリオ出版 1989
絶版になりました

周囲の人たちは、身体が小さいジャンを「うさちゃん」と呼んでいます。そう呼ばれるのが嫌なのに理解されない寂しさから、ちゃんと名前で呼んでもらうためにジャンは独りで考え、ある行動に出ます。しかしそれは常軌を逸したものでした。
ジャンは刑務所に収監されます。そこで出会ったのが、自分よりも小柄なウサギのジム。猟師の命を奪って刑務所に入ったジムは、「そうしなけりゃ、こっちがやられちまったんだぞ」と語ります。ジャンとジムは親しくなり、ついには刑務所を脱走して森へ。ジャンの祖父に助けられ、今もふたりは誰にも見つからない場所で、身を潜めて暮らしています。

この絵本は、このような強烈な問題を提起している物語です。ジャンは、大人たちに一人前として認められないもどかしさに苦しみ、はめを外しすぎてしまいました。ジムの「そうしなけりゃ、こっちがやられてしまったんだぞ」という言葉は、ジャンの心境と重なります。
大人の何気ない態度が気付かぬうちに子どもを傷付け、壊してしまうことがあるのだという痛烈なメッセージが伝わってきます。こういった啓蒙により、自分を見つめなおしたり、反省したりするきっかけにもなると思いました。
大人向けの物語かも知れません。子どもにこの物語を読ませたいかどうかは判断に迷いますが、読むならば、ジャンに起こった出来事について考えることがたくさんあると思います。

すべてひらがなとカタカナで書かれています。

2025/09/02

「どうぶつかくれんぼ」ミッフィーのしかけ絵本

     
「どうぶつかくれんぼ」ミッフィーのしかけ絵本
ディック・ブルーナ 絵
講談社


折りたたまれたページや切り抜き穴の向こうに、ちらりと隠れて見える生きものたち。ページをめくって、誰が隠れているのかを見つけ出すのが楽しい絵本です。16cm四方のかわいらしいサイズで、シンプルな言葉と愛らしくはっきりした色使いでお馴染みのミッフィーの絵本です。中のページは厚手の紙ではなく傷みやすいので、一緒に見守ってあげるといいと思います。