2025/11/30

「いたずたきかんしゃ ちゅうちゅう」

ちゅうちゅうは真っ黒でピカピカ光ったきれいなかわいい機関車です。
後ろの客車や貨車に毎日たくさんの人や荷物を乗せて、 
小さな町の駅から大きな町の駅へ、行ったり来たりしています。
ちゅうちゅうはある日こう考えました。
「思い客車がなければ、もっと速く走れるのに。
そうしたら、みんなは私に注目するのに!」
そして、ちゅうちゅうはチャンスを見計らい、
ひとりで走り出しました! 


「いたずたきかんしゃ ちゅうちゅう」世界傑作絵本シリーズ
バージニア・リー・バートン 作、むらおか はなこ 訳
福音館書店 1961
全国学校図書館協議会選定「必読図書」
全国学校図書館協議会選定「基本図書」
サンケイ児童出版文化賞推薦
厚生省中央福祉審議会推薦



「ちゅうちゅう」は勝手に走り出し、街中大混乱になって人々を怒らせます。終いには道に迷い、力尽きてしまいます。「ちゅうちゅう」は仕事仲間に助けられて温かく迎え入れられ、深く反省するのでした。
野望と失敗、寛容さや教訓が含まれた物語を世界中の人々はどのように楽しんできたのでしょう。私が子どもの頃は、「ちゅうちゅう」が暗く寂しいところに迷い込む場面にはゾクゾクとさせられ怖い印象でした。一方で表紙の裏側のパステルカラーに彩られた街の絵が大好きで、街の線路上を「ちゅうちゅう」が走る空想にふけるのをよく楽しみました。
読み応えのある文章量で、サイズは高さ31cmの大型です。
原書の初版は1937年、日本での初版は1961年だそうです。

 原書:
"Choo Choo"
by Virginia Lee Burton, Houghton Mufflin Company, 1937.

2025/11/28

「バルバルさん」

床屋のバルバルさんは、毎日楽しく仕事をしています。
今日のお客さんはいつもと違います。
動物たちが次々にやって来るのです。

「バルバルさん」
乾 栄里子 作、西村 敏雄 絵
福音館書店 2008

いつもとは違うお客さんにドッキリしながらも、いつものように楽しく仕事をするバルバルさん。お客さんとしてやって来た動物たちもご満悦です。ほのぼのとして幸せな気分になるチャーミングな絵本です。ところで、どうして今日のお客さんはいつもと違うのでしょう? 絵本を読むと、なるほどな事情がわかりますよ。

2025/11/26

「いろ いきてる!」

「いろ いきてる!」
谷川俊太郎 文 、元永定正 絵
福音館書店

とりどりの色が、にじんだり溶け合ったり、垂れたりしながら変化していく様子の一瞬をとらえ、見開きで2ページずつ短い言葉とともに掲載されています。それぞれの絵は大胆で、色はジワーッとにじんでいったり、どろりとゆっくり動いたり素早く弾けたり、ぽたぽたと落ちたりしている最中で、動き方や速さが伝わってきます。いいえ、人によって感じ方、想像の仕方は異なりますので、一瞬をとらえたこの絵本の静止画に、動きや速さを連想しないかもしれません。手に取った方はどのようにご覧になるでしょうか。感受性豊かな幼児期のお子さんは、どう反応するでしょうか。
絵の具を使って絵を描く経験の多いお子さん、造形や絵画の教室に通っているお子さんは、「いろ いきてる!」を文字通り実感するかもしれません。また、画用紙と絵の具のセットを用意してこの絵本の世界を試してみたら、様々な色の塗り方を学べそうですね。


2025/11/24

「しあわせの石のスープ」

中国の山道を、三人のお坊さんが旅していた。
ふもとの村に降りると、村人たちは戦争により心を閉ざし、
隣人にも心を開かず、よそ者を歓迎する様子はなかった。
「この村の人々は幸せをしらぬ。」
「村人に石からスープを作ることを教えてやらねばならぬ。」
お坊さんたちはそう言い、
木の枝で火を起こし、小鍋に水を入れて火にかけた。
「石のスープを作るには、丸いすべすべの石が三ついる。」
様子を見ていた村の女の子がちょうどよい石を持ってきた。 
一番賢いお坊さんが言った。
「この石がいいスープになる。」

「しあわせの石のスープ」
 ジョン・J・ミュース 作、三木卓 訳
フレーベル館 2004
絶版になりました

石のスープ? どんなスープ? 疑問を持った私は興味深々でこの絵本を開きました。
勇気ある女の子がお坊さん達のもとに来たのに続き、村人達も石のスープに興味を持ち始めます。お坊さん達は村人に幸せをもたらすためにスープを作り始めました。村人達は、幸せをどうやってみつけるか。そして、幸せとは何なのか。あと味のいいお話です。
上の絵は、村の女の子が石を持って来る場面です。石好きの私はこの3つの石の絵が好きで、額に入れて飾りたいくらいです。アメリカ生まれの作者は、日本で石の彫刻を学んだそうです。ただの丸い石をこんなに美しく描いた作者も、石が大好きなのですね! 
「石のスープ」の絵本は他にいくつもあります。訳者のあとがきによると、「石のスープ」の話はヨーロッパの民話ですが、東洋思想に関心の深い作者は舞台を中国に移し、お坊さんが「石のスープ」の教えを広める形に再話したとのことです。積み上げられた三つの石の形は、お座りになっているお釈迦様の形なのだそうです。

漢字にはすべてふりがなが振ってあります。
小学生のお話会にぴったりの絵本だと思います。

原書:
 "Stone Soup"
 by Jon J. Muth, Scholastic, 2003.

2025/11/22

「こぶたくん」

お母さんと一緒にお菓子を焼く幸せな時間。 
妹アマンダの遊びを邪魔するこぶたくんを優しくさとすお父さん。
こぶたくんとアマンダのもてなしに、たっぷり喜ぶおばあちゃん。 
子どもたちの外出の支度にてこずり、泣いてしまうお母さん。
こぶたくんと家族の何気ない日常を描いています。

   
「こぶたくん」こぶたくんのおはなしシリーズ 1 
ジーン・バン・ルーワン作、アーノルド・ローベル 絵
三木卓 訳  童話館


こぶたくんと家族との日常は、読む人に身近な出来事を思い起こさせて共感を呼ぶことと思います。こぶたくんは大人を困らせたり喜ばせたりし、大人と一緒に楽しみを分かち合おうとします。こぶたくんはきっと、どこの家庭の子どもにもそっくりです。また、優しいお母さんがこぶたくんたちに苛立ちを隠せなくなる場面もあり、決して完璧な大人ではないことに親しみを覚えます。お父さんは子どもたちを受け止めるのが上手で、落ち着いて対応するところが頼もしいです。柔らかな文章で、こぶたくんの日常を温かく物語ってくれます。挿絵は「かえるくん」と「がまくん」が出てくるシリーズでも人気の高い、アーノルド・ローベル氏が描いています。

5章からなっています。
小学1、2年生の音読学習にもぴったりです。
ひらがなとカタカナの他、簡単な漢字(本、日など)だけが使われており、漢字にはふりがな付きです。 

2025/11/20

「恐竜トリケラトプスとギガノトサウルス 南海大決戦の巻」

草食恐竜トリケラトプスたちは緑豊かな新天地に住み、 
平和を保つために肉食恐竜に目を光らせています。
ある時、この新天地に肉食恐竜の群れがやってきました。
カルノタウルスです。
さらに、巨大肉食恐竜ギガノトサウルスもやってきました。 
トリケラトプスたちが翼竜プテラノドンと力を合わせ、
勇敢に立ち向かって群れを守る物語。

「恐竜トリケラトプスとギガノトサウルス 南海大決戦の巻」
黒川 みつひろ 作
小峰書店 2007

恐竜が大好きな子どもたちを魅了する、読みごたえのある絵本です。この絵本の面白さは、何と言ってもたくさんの恐竜たちが躍動する迫力と美しい色彩。そして恐竜たちはちょっぴり可愛らしい表情をしていて愛嬌があります。トリケラトプスを主人公にしたシリーズになっており、シリーズを通して様々な恐竜たちに出会えます。
巻末にはギガノトサウルスとカルノタウルスについての解説が付いており、知識を得ることができます。

すべての漢字にはふりがな付きです。

2025/11/18

「銅版画家の仕事場」

「銅版画家の仕事場」
アーサー・ガイサート 作、久美沙織 訳
BL出版 2004
絶版になりました


この絵本に出会った時はとても嬉しかったです。絵が好きな大人が喜ぶ絵本です! すべてが銅版画で描かれています。
作者のアーサー・ガイサート氏が少年時代に携わった銅版画の仕事を再現しています。銅版画家である作者のおじいさんの仕事場の様子、道具の紹介と使い方、版画の過程が丁寧に描かれています。それだけではありません。作品を見守る緊張感が伝わってきたり、つかの間の息抜きも垣間見れ、まるで読み手の自分も仕事場にお邪魔しているような一体感を味わえます。また、少年時代の作者が仕事を手伝いながら銅版画の世界に魅せられていくのもわかります。この絵本は、銅版画家として活躍するガイサート氏の原点を描いているのではないかと思いました。
日本語版も原書も絶版なのが残念です。
アーサー・ガイサート氏の絵本は、この他にも「ノアの箱舟」と「洪水のあとで」を私のブログ内でご紹介しています。いずれもおすすめです。

2025/11/16

「ちいさなヒッポ」

カバのヒッポは生まれた時からいつもお母さんと一緒。
カバは昼間は眠って夜は草を食べ続け、
大きく力強くて怖いものなしです。
まだ小さなヒッポもお母さんと一緒にいれば安心です。
ところが、ひとりで群れから離れたヒッポは大変な目に! 

「ちいさなヒッポ」 マーシャ・ブラウン 作、内田 莉莎子 訳
偕成社 1984


万が一の時のために、お母さんはヒッポに身を守る術を教えていました。ヒッポは危機一髪、お母さんに教わった方法で命を救われるのでした。
「ネイチャーハンドブック 世界哺乳類図鑑」(新樹社)によると、――カバは見かけによらず陸上でも水中でも機敏。夏の間は一時的な大きな群れを作り、水たまりで水浴びをしている。夜行性で主に草を食べる。そして、メスは水中で子どもを1頭産み、母親は激しく子どもを守り、子どもはほぼ成熟するまで母親と一緒にいる。――ということです。
「ちいさなヒッポ」にはカバのこの特性が盛り込まれ、カバの母と子の一大事を描いた愛情に満ちた物語です。落ち着いた色彩で彩られたキリリとした迫力のある版画が美しく、版画の質感が伝わってくる画用紙のような紙質も良いです。

水、川、木、金、目といった小学1年生で習う漢字が使われ、ふりがな付きです。
小学1年生の音読学習にもぴったりです。

2025/11/14

「大きな木のような人」

植物園に通う少女サエラと、 植物を愛でる人に惜しまず知識を分け与えてくれる植物学者。 二人は出会い、サエラは植物の息吹に魅せられていく。 瑞々しい植物園の草花や木々の絵にうっとりとさせられながら、 清々しい風が通り過ぎていくような絵本。

「大きな木のような人」
いせひでこ 作
講談社 2009

 サエラが植物園で過ごした豊かな時間を描く、温かくて爽やかな、心穏やかになる物語です。無邪気なサエラを温かく迎え入れる植物学者に、読む人はみんな逢いたくなるのではないでしょうか。花や葉を枯らしても、それを無駄にはしない植物のように、植物学者はサエラとの出会いを次につないでいきます。
「ルリユールおじさん」に出てくるソフィーがこの植物園に登場するのも素敵です。

2025/11/12

「ルリユールおじさん」

ルリユールとは製本職人のこと。
フランスの伝統芸術、ルリユールの魅力が輝く物語。
植物への高い関心を示す少女・ソフィーとルリユールおじさんとの出会いや、
ルリユールおじさんの仕事への情熱と師である父との記憶が、
透明感にあふれる清らかな絵で描かれています。

 
「ルリユールおじさん」
伊勢 英子 作
理論社 2006
講談社 2011
講談社出版文化賞絵本賞受賞

なんという素敵な絵本なんでしょう! 大人に一押しするとしたらこの絵本です。
パリの風景を描いたスケッチ画が美しいことに魅了されるだけではなく、ルリユールの仕事ぶりにも魅了されます。物語も巧みに美しく構成されていて、言葉には余韻を感じさせます。そして、ルリユールおじさんとソフィーがかつて共に見上げたアカシアの木のもとで語られるラストシーンの言葉には、大きく心を揺さぶられました。二人がそれぞれ胸に秘めた志が、確かに根を張り枝葉を広げているのだという清々しい感動を覚えました。太く高くそびえ立つアカシアの木のように。本を閉じた後も、物語の美しいハーモニーが心に響き渡ります。

あまりふりがなは振ってありませんので、自分で読むなら小学校高学年からです。
大人にも、小学生への読み聞かせにもおすすめです。

2025/11/10

「ぞうのババール」こどものころのおはなし

大きな森の国に住むババールは、
お母さんにとてもかわいがれ、とてもいい子に育ちました。
ある日、お母さんは狩人に狙われて撃たれて死んでしまいました。
次に狙われたババールは必死で逃げ、人々の住む街にたどり着きます。
そこでババールは気前のいいおばあさんに出会い豊かに暮らしますが、
それでもさびしく、故郷を思うのでした。
すると・・・。
「ぞうのババール」こどものころのおはなし(1)
ジャン・ド・ブリュノフ 作、矢川寿美子 訳
評論社 1974

突然の母親の死に直面し、悲しみの中を逃げ切った小象 ババールが、やがてみんなに祝福されて象の王になるまでの話です。

漢字は「大」と「子」だけ用いられており、ふりがな付きです。

ババールをおおらかに迎え入れる人間たちや、街での暮らしを経験して森に戻ったババールを敬意を持って受け入れる象たち。温かい仲間に恵まれたババールを取り巻く、豊かな愛情、死、そして一生懸命に生きる楽しみを描いた、ババールのドラマチックな子ども時代の物語です。フランスで1931年に出版され、長く愛されてきました。
ところで、ババールのお母さんが突然命を落とすことに少なからず衝撃を受けるのではないでしょうか。このお母さんの悲劇には、次のような時代背景もかかわっているのではないかと思います。
1914年から1918年までの第一次世界大戦で、フランス北部は激戦地となりパリは空襲を受け、飢餓やスペイン風邪の流行もあり、犠牲者数は甚大でした。身近に人々の死がある中、子ども達の役割として、頼もしく育ちしっかりと大人を支えるよう期待されたそうです。「ババール」を作り上げたジャン・ド・ブリュノフとその妻は、その頃に10代を過ごしました。「ぞうのババール こどものころのおはなし」は、その時代をはっきりと反映していると思います。

作者のジャン・ド・ブリュノフは妻が創作した物語を絵本に仕立て、「ぞうのババール こどものころのおはなし」を1931年に出版しました。その後、「ババールのしんこんりょこう (1932)」「おうさまババール (1933)」アルファベットの本 "L'ABC de Babar"(1934) 、「さるのゼフィール (1936)」を出版しました。翌年に若くして作者が亡くなった後、遺稿をもとに「ババールのこどもたち(1938)」「ババールとサンタクロース (1941)」が出版されましたが、その時10代半ばだったご子息のローラン・ド・ブリュノフも手掛けて完成させたのだそうです。ローラン・ド・ブリュノフはその後、父と同じ学校で絵画を学び、父の創作を引き継いで作風もそっくりに仕立て、数多くのババール作品をつくり続けました。

《 ジャン・ド・ブリュノフの絵本 》

 
ババールのしんこんりょこう(2)

おうさまババール(3)

ババールのこどもたち(4)

ババールとサンタクロース(5)

「さるのゼフィール」なつやすみのぼうけん

2025/11/08

「はなたれこぞうさま」

花売りの男は、売れ残った花をいつもこう言って川へ流していた。
「おとひめさまのところへ行って、かわいがってもらえよ。」
いっこうに花が売れなかったある日、 川を眺めて困っていると、
おとひめさまの使いが現れた。 
使いの女は、いつもきれいな花をくれるお礼に、と、
願いを何でも叶えてくれる子どもを花売りの男に差し出した。
その子どもはいつも鼻をたらしているけれども、
好物のエビなますを食べさせて願い事を言うと、
プーンと鼻をかんで、たちまち願いを叶えてくれるのだった。

「はなたれこぞうさま」
川崎 大治 作、太田 大八 絵
童話館出版 2019

花売りの男は、「はなたれこぞうさま」にエビなますをお供えしてはお米や着物を与えてもらい、あばら家も大きなお屋敷にしてもらい、贅沢三昧して怠けて楽をします。我を忘れ、大事なことも忘れてしまった男の結末は? 
昔話の雰囲気たっぷりの文章で、楽しくテンポよく、読みやすいです。 
グリム童話「漁師とおかみさん」に似た展開で、読み比べるのも面白いと思います。
「はなたれこぞうさま」はいくつかの絵本が出ていますが、太田大八さんの絵はまるで古美術の日本画のようです。 

すべての漢字にはふりがなが振ってあります。

2025/11/06

「漁師とおかみさん」

ある漁師が、大きな物言う魚を釣り上げた。 
魚は、本当は魔法で魚にされた王子なのだ、と言うので、
漁師は魚を逃がしてやり、家に戻った。
それを聞いたおかみさんは、お礼に小さな家をくれるよう頼むと、 
願いは叶い、あばら家だった家が立派な家に変わった。
しかし欲望は次々と膨らみ、彼女は次々と贅沢を望むようになる。

「漁師とおかみさん」グリム兄弟の童話から
カトリーン・ブラント 絵、藤本朝巳 訳
平凡社

お話し会にもおすすめの、グリム童話の教訓話です。
初版のグリム童話に忠実に構成されており、少し細部が変えられているだけです。例えば、夫婦の住まいは小便壺から「あばら家」に、ヒラメは「物言う魚」に変えてあります。
絵は、流れるように力強い筆使いが重厚な雰囲気で可愛げもあり近づきやすく、物語を盛り上げてくれます。
「おかみさん」は、住んでいるあばら家に不満でいたところ、魚の不思議な力によって立派な家を手に入れます。しかしそれにも満足することはなく、身勝手で贅沢な願いはさらに続きます。ずうずうしい「おかみさん」とは反対に、尻に敷かれて言いなりになる「漁師」は、こうして何度も「おかみさん」に言われるがままに魚に願いをかけに行きます。その度に海は次第に表情を荒らげて迫力を増していきます。楽をして贅沢を手に入れ、いつになっても現状に満足のできない「おかみさん」と、そんな彼女を止められない「漁師」は、挙句の果てにはどうなるのでしょうか? それはお決まりの結末ですが、それがやはり昔話の愛されるいいところだと思います。

次回は、この物語と似た日本の昔話について書きます。主人公がどんどん欲深くなっていって我を見失うところが似ていますし、結末も同じようなのですよ。

2025/11/04

「てぶくろ」

おじいさんが森の中で落とした手袋の中に
生きものたちが次々と住み込みます。
あっという間に住人は7匹に。
はじけそうになった手袋は、どうなるのでしょう。

「てぶくろ」ウクライナ民話 世界傑作絵本シリーズ
エウゲーニー・M・ラチョフ 絵、うちだりさこ 訳
福音館書店 1965
厚生省中央児童福祉審議会推薦
全国学校図書館協議会選定
日本図書館協会選定
大阪市立中央図書館選定

手袋にはまず、すんなり入りそうなネズミ、カエルが住み込みます。続いて、ウサギ、キツネ、オオカミ、イノシシ、クマが順に入りたいとやって来ます。ウサギの段階で現実ならば無理なところを、絵を見ると画力により心配ご無用に思えてしまいます。さすがに段々と窮屈になっていき、最後のクマが手袋に収まる姿だけは、読者の想像に任せています。また、手袋に生きものたちが入り込むにつれ、手袋が次第に建築物のようになったり、破れそうになっていく変化も凝っていて、何度読んでも飽きません。驚くべき面白さです。同じようなセリフを淡々と繰り返す昔話でありながら、こんなにも豊かに描かれていることで、世界中で長く愛される絵本になったのだと感じました。

2025/11/02

「雪の女王」デンマークの女王による作品

「雪の女王」
ハンス・クリスチャン アンデルセン 原作、三辺 律子 訳
プチグラパブリッシング 2005
絶版になりました

原作に忠実なストーリーです。
漢字にはふりがなは振ってありません。

アンデルセンの国、デンマークで制作された短編映画『雪の女王』(26分)の絵本版です。映画も絵本も、当時のデンマーク女王マルグレーテ2世によるデコパージュをもとに構成されています。
デコパージュには、女王陛下が所有されていた宝石が惜しみなく使われています。夢のような一冊です。マルグレーテ2世は芸術への造詣が深く、70年代初頭には Ingahild Grathmer(ご自身のミドルネームの一部と「Margrethe」のアナグラムを組み合わせた名)の名でトルーキンの『指輪物語』の挿絵を描かれたり、衣装デザインなどの分野でも長く活躍され、芸術面でも人々を魅了し楽しませてこられました。2024年初頭に退位されるまで、52年間に渡り女王として国を導かれました。日本の皇室に次ぎ、デンマーク王室も長い歴史を誇ります。その中でも、マルグレーテ2世のご在位は特筆すべきものです。

原題(英語版):
"The Snow Queen"
A fairy tale by Hans Christian Andersen
JJ Film APS
Découpages by Her Majesty Queen Margrethe Ⅱ


短編映画 "Snedronningen"(『雪の女王』)についての情報も書いておきます。デンマーク語の作品です。デコパージュをアニメーション化し、役者も登場します。元女王による語りで進行します。

原題: "Snedronningen"
原作: H. C. Andersen, 1845.
制作年: 2000年
JJ Film APS
26分
デコパージュ・語り:  Her Majesty Queen Margrethe II
監督: Jacob Jørgensen and Kristof Kuncewicz

また、デンマークの映画『エーレンガート:誘惑の極意』(2023)では、架空の宮廷舞台のイメージを元女王マルグレーテ2世がデコパージュにより創出し、それを忠実に再現すべく、ロケ地を選んで美術やCGによって舞台を作り上げていったそうです。衣装も元女王がデザインし、監修しています。(「エーレンガート:誘惑の極意 制作の舞台裏」より)この制作の舞台裏の映像にて、元女王がデコパージュに取り組まれる様子を垣間見ることができます。