2026/03/02

「すばらしい季節」 タシャ・テューダー 作

農場に住むサリーは、季節の移り変わりを全身の感覚を使って確かめます。 
春に咲く花の香り、緑に変わる木々、小鳥のさえずり。
夏には野いちごを味わい、秋にはすべすべのどんぐりを集め、
冬には薪の燃える匂いをかぎます。 

 「すばらしい季節」
タシャ・テューダー 作、末盛千枝子 訳
すえもりブックス

サリーを通して、自然の恵みが一つひとつ丁寧に語られます。季節が移ろうなかで変化する動植物の姿や、農場で営まれる人々の暮らしが、穏やかで喜びに満ちた絵とともに描かれています。日々の暮らしの中で「すばらしい季節」を感じる豊かな気持ち、ささやかなことにも愛おしさを覚える幸せ。これを私も味わい続けていきたいと思わせてくれる作品です。

さて、日本語訳の文章も美しく、小学1、2年生の音読学習にもおすすめです。ただ、漢字がたくさん使われています。使われている漢字は次の通りです。(間違いがあったら教えて下さい。) 

 小学1年生で習う漢字: 
日、目、耳、口、手、花、草、木、森、小、音、土、空、気。

 小学2年生で習う漢字:
 春、夏、秋、冬、場、野、原、鳥、池、黒、雪、牛、夜、星。

 農、葉は3年生。
 季、節は4年生。

また、農場、季節、池、雪、水仙、子猫、牧場、子犬、葉、渡り鳥、夜空、星にはふりがな付きですが、2度目以降にはふりがなのないものもあります。

2026/02/28

「あの路」

独りぼっちの少年と、 ある路に住み着いた三本足の犬。
「ぼく」と「三本足」は心を通わせ、
いつも寄り添っていた。
「あの路」
山本けんぞう 文、いせひでこ 絵
平凡社 2009

かつても今も孤独な「ぼく」を強く支えているものは何か。これをそっと打ち明けてくれる感動の物語です。きっと「ぼく」が一番辛かった時に、どこか似ている境遇の「三本足」と出会ったのだろうと思います。また、大切な人の死を幼くも知っている「ぼく」の心の強さや弱さ、死への恐れと喪失感も行間から伝わってきました。山本けんぞうさんの詩的な言葉と伊勢英子さんの絵は、溶け合っているように切り離せず、言葉からも絵からも物語が発せられて一つになっています。「ぼく」の心の中を覗き見るように引き込まれ、胸がいっぱいになりました。

あまり漢字にはふりがなが付いていませんが、小・中学校の教科書に載せて欲しいくらい、子どもたちにもおすすめです。

2026/01/20

「よこむいて にこっ」

「よこむいて にこっ」
高畠 純 作
絵本館 1998
何やら機嫌が良くなさそうなお顔がこちらを向いています。
そして横を向くと、「にこっ」と笑顔に!

人や生きものに限らず、前から見た姿と横から見た姿とでは印象が違うことがあります。そんな面白さがこの絵本でも感じられます。 あっという間に読み通せ、読み手も聞き手もあっという間に笑顔に! 赤ちゃんから楽しめる、シンプルな絵本です。

2026/01/18

「ぼく にげちゃうよ」

子ウサギは家を出てどこかへ行ってみたくなりました。
「ぼく、逃げちゃうよ」
すると、母さんウサギは言いました。
「おまえが逃げたら、母さんは追いかけますよ」

「ぼく にげちゃうよ」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作、クレメント・ハード 絵
いわたみみ 訳
ほる出版 1976
全国学校図書館協議会選定図書
日本図書館協議会選定図書

子ウサギと母さんウサギの幸せをおすそ分けしてもらえる物語です。
子ウサギが川の魚になって泳いで逃げようと、高い山の岩になろうとも、鳥になって逃げようとも、母さんウサギは、あの手この手で「見つけ出しますよ」と言うのです。子ウサギと母さんウサギのやり取りがほほえましく、追いかけっこをしている絵が包容力と想像力に満ちていて楽しいです。結局子ウサギは母さんにはかなわず、話のオチは、母さんウサギの懐にすとんと落ちる温かい物語になっています。
この絵本の挿絵が、「おやすみなさいおつきさま」「ぼくのせかいをひとまわり」の絵本の中で額縁に飾られています。これら3冊の絵本は大きさも同じで、揃えたくなります。

原書:
"The Runaway Bunny"
by Margaret Wise Brown (Author), Clement Hurd (Illustrator),
Harper & Row, 1942

2026/01/16

「ぼくのせかいをひとまわり」

ぼくの絵本、ママの絵本。
ママの椅子、ぼくの椅子。
パパのぼく、ママのぼく、
ぼくのおもちゃのくまちゃん。

「ぼくのせかいをひとまわり」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作、クレメント・ハード 絵
おがわ ひとみ 訳
評論社 


「おやすみなさいおつきさま」の子ウサギの家族が登場し、生活感を見せてくれます。カラフルなページとモノトーンのページが交互に出くる構成は「おやすみなさいおつきさま」と同様です。
原題は "My World" です。子うさぎ「ぼく」の世界は手の届く範囲にあり、確かに「ぼく」のために存在するものであふれています。パパやママのものと比べると「ぼく」のものは小さく、本格的ではなく、使いこなせないものもあるけれど、間違いなく「ぼく」の大切なもの。それを紹介して見せてくれる子ウサギは、満たされた気分でいるように思えます。
次回は「ぼく にげちゃうよ」について書きます。その挿絵は、「おやすみなさいおつきさま」と「ぼくのせかいをひとまわり」に出てくる額の絵になっています。

原書:
"My World"
by Margaret Wise Brown (Author), Clement Hurd (Illustrator),
Harper, 1949.
楽天 / アマゾン

2026/01/14

「おやすみなさいおつきさま」

夜7時。
子ウサギはベッドに入ったものの、まだ寝付けません。
そして、部屋の中の一つ一つのものに「おやすみ」を言います。
心穏やかになる優しい物語。
「おやすみなさいおつきさま」
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作、クレメント・ハード 絵
瀬田貞二 訳
評論社 1979

読み聞かせをしていると癒されます。子ウサギが「おやすみ」の声がけを重ねていく簡素な物語の中に、一日の心をときほぐし、穏やかでくつろいだ気分になる秘訣が盛り込まれている気がします。愛するものに「おやすみなさい」を伝える安堵感が形になった作品だと思います。 毎日愛情を持って「おやすみなさい」を伝えることができる間柄は、互いの心の宝なのですね。
時間の移ろい、月の動き、明かりの変化を読み込む楽しみもあります。原作の雰囲気のままの日本語訳も傑作だと思います。
次は、姉妹編「ぼくのせかいをひとまわり」について書きます。

原書: "Goodnight Moon" 
by Margaret Wise Brown (Author), Clement Hurd (Illustrator), 
Harper & Brothers, 1947.

2026/01/08

「ねむいねむいおはなし」

「ねむいねむいおはなし」
ユリ・シュルヴィッツ 作、さくまゆみこ 訳
あすなろ書房 2006




おやすみまえの読み聞かせにとっておきの絵本。
「おもちゃのチャチャチャ」のように、真夜中におもちゃが人知れず遊んでいるに違いない ――― 子どもの頃そう考えた人もいると思います。「ねむいねむいおはなし」は、そんな密かな楽しみで胸をいっぱいにさせながらも、すうっと眠りの世界へと誘ってくれるお話です。「ねむいねむい」という言葉が何度も出てきて、呪文にかかったようにその気になってしまいます。
日本語の響きがとってもいいです!

すべてひらがなとカタカナ表記です。

原書: 
"So Sleepy Story" 
by Uri Shulevitz, 2006.

2026/01/06

「オズのまほうつかい」

フランク・ボーム 原作、木坂涼 文、朝倉めぐみ 絵
フレーベル館 2016
全国学校図書館協議会選定図書

前回は原作に忠実な「オズの魔法使い」をご紹介しましたが、今回はもっとシンプルに絵本で読む「オズのまほうつかい」です。
朝倉めぐみさんのイラストで出版されたと知った時は嬉しかったです。ファッショナブルな絵本で感激しました。この物語の象徴のひとつ、エメラルドの彩りが素敵です。

2026/01/04

「オズの魔法使い」

カンザス州に暮らすドロシーは、
犬のトトと一緒に竜巻に巻き込まれ、
家ごと「オズ」の国に飛ばされてしまう。
ドロシーはカンザスに戻るために。
エメラルドの都にいるオズの魔法使いに会いに行く。

 「オズの魔法使い」
ライマン・フランク・ボーム 作、W. W.デンスロウ 画
渡辺茂男 訳
福音館書店 1990

原題 "The Wonderful Wizard of Oz"  1900年に出版され、アメリカでは国民的作品として読み継がれています。初版のデンスロウの挿絵を復刻し、原作に忠実な日本語訳で読める「オズの魔法使い」と言えばこの本です。
アメリカ人は「オズの魔法使い」をよく知っており共通言語のように利用し、様々な登場人物や場面が比喩に用いられるのを見聞きします。例えば、ドロシーは黄色いレンガ道を進んで旅を始めますが、黄色いレンガ道を進め(Follow the Yellow Brick Road)、と言えば目標に向かって進めということを意味します。アメリカ文化の背景のひとつとして読んでおきたい物語です。
読み聞かせするとすれば何日もかかりますが、おもしろい内容で読みやすい文章なので、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
次回はおすすめの「オズの魔法使い」の絵本をご紹介します。

また、ミュージカル映画版も名作ですので見ておきたいですね。サントラも良く知られています。Over the Rainbow はとくに有名ですし、先ほど書いた Follow the Yellow Brick Road という曲もあります。
"The Wizard of Oz"「オズの魔法使」1939年
出演:ジュディ・ガーランド 他
DVD 楽天 / アマゾン 


「オズの魔法使い」もっとシンプルに、絵本で読むならこちらがおすすめです。朝倉めぐみさんのイラストで出版されたと知った時は嬉しかったです。ファッショナブルな絵本で感激しました。
フランク・ボーム 原作、木坂涼 文、朝倉めぐみ 絵
フレーベル館 2016
全国学校図書館協議会選定図書

2026/01/02

「十二支のことわざえほん」

「十二支のことわざえほん」
高畠純 作
教育画劇 2006

ことわざって面白い!という気持ちになること間違いなしの絵本です。十二支にちなんだ22のことわざが紹介されています。22の内訳は、兎、竜、猪は1つずつ、犬は3つ、他は2つずつ。各ことわざには簡潔な説明が添えられおり、細かい解説がなくても、わかりやすくてユーモラスな絵を見れば一目瞭然です。何度も笑いがこぼれます。学びの要素がありながら難しいことがなく楽しめて、内容も厳選されているので1冊丸ごとを一気に読み通せる達成感があるのも魅力です。

幼児からでもだいたい理解できそうです。
特に小学生におすすめです。
漢字にはすべてふりがな付き。
説明文は、「一羽、二羽」以外はほとんどひらがなで書かれています。

2025/12/30

"Snow Crystals" 雪の結晶の写真集


"Snow Crystals"
W.A.Bentley, W. J. Humphreys, Dover Publications.

前回は「雪の写真家 ベントレー」について書きました。若き日のベントレーが人々に先駆けて雪の結晶の写真撮影法を確立し、撮り続けてきた写真の数々。ベントレーが撮った神秘的で息を呑む美しさの結晶の写真集 "Snow Crystals" は、今でも人々を魅了し続けています。初版は1931年で、選りすぐり2,000点以上の結晶を系統立ててびっしりと端正に並べ、W.J. ハンフリーの文章とともに構成されています。これまで改変することなく発行されてきたそうです。静かで清らかな印象の写真集で、眺めていると心が穏やかになります。「雪の写真家 ベントレー」が好きな方にはぜひともおすすめします。 

2025/12/28

「雪の写真家 ベントレー」

1865年、アメリカ、バーモント州の豪雪地帯に生まれたウィルソン・ベントレー。彼は雪の結晶の美しさに魅せられ、10代の頃、雪の日には雪の結晶の観察やスケッチに没頭した。雪の結晶はすべてが異なる形をしているうえ、すぐに はかなく解けてしまう。これを何とか写真に残し、人々に結晶の美しさを伝えたい。こう願うベントレーは、ついに17歳の時に両親にカメラを買ってもらい、工夫や失敗を繰り返してようやく雪の結晶の美しい写真を取ることに成功した。しかし、当時はその写真に興味を持つ人はおらず、後にベントレーの雪の研究が認められて結晶の写真集が出版されるまでに何十年もの年月がかかった。そして、その写真集 "Snow Crystals" は世界中を魅了し続けている。 美しい自然を愛でるのが大好きだったベントレーの、とりわけ雪の結晶に情熱を注いだ生涯を描いた絵本。

「雪の写真家 ベントレー」
ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン 作、メアリー・アゼリアン 絵
千葉 茂樹 訳
BL出版 1999年
コールデコット賞受賞
アメリカ図書館協会優良児童図書

雪の季節になると読み聞かせたくなる、温かな版画で描かれた絵本です。ベントレーが雪をひたむきに愛する姿と、人々にも惜しみなく雪の結晶の美しさを披露する姿には、何度読んでも心が動かされ、幸せな気持ちになります。また、農業を営む両親がベントレーのために高価なカメラを大奮発して買ってくれる場面では、親としての見事な決断力があったことを知らされます。大きな愛情と深い理解があってこそ、ベントレーは偉業を成し遂げたのですね。地元のバーモント州では有名人で、彼の功績は地元の誇りとなっているそうです。
次回は ベントレーが撮影した雪の結晶の写真集 "Snow Crystals" をご紹介します。

簡単な漢字にはふりがなは付いていませんが、小学3、4年生から自分で読めると思います。


原書:
   
"Snowflake Bentley"
by Jacqueline Briggs Martin (Author), Mary Azarian (Illustrator), 
Houghton Mifflin, 1998.

2025/12/26

「日本のことわざかるた」

新装版「日本のことわざかるた」
西本鶏介 文、いもとようこ 絵
ポプラ社 2023

子どもの頃に遊んだかるたの読み札の文を、私はいまだに思い出すことがあります。という訳で、我が家のかるたは、あとあと思い出しても役に立つ実用的なものを選んでみました。
いもとようこさんの優しくて可愛い絵が魅力的な「日本のことわざかるた」は、遊ぶうちに44のことわざに親しむことができます。絵札の裏側にはことわざの意味と例文が書いてあるので、取った絵札の意味をすぐに確認できるのが便利です。

2002年刊行の品が同じ内容のまま新装版になっています。
我が家のものは旧版ですが、かるた1枚のサイズは910mm×630mmで一般的なトランプくらいの大きさ、角は丸くしてあるので扱いやすいです。
読み札はひらがな書きです。
絵札裏の解説文の漢字にはふりがな付き。